2011年2月13日

やる夫が八犬伝のあらすじをきくようです 回外特別編 追加資料

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 お上が問題視した崋山の文章(天保10.7.24付「口書」引載のもの)



 ※適宜、仮名遣い、句読点などを改めています。
 ※下線は、特にポイントとなったと思われる箇所

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●初稿西洋事情書  ≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


---(西洋諸国の)学校の盛んなる事、我邦・唐山(とうざん(支那ノコト))の及ぶ所に御坐無く候。
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---日本海辺のマリアネ・ヒリピスの諸島、洋人の領になきはこれ無し。

唯、其の国を古来より失わざるものは、百爾西亜(ペルシア)・我邦のみに御坐候。

存じ出し候えば、誠に心細き事に御坐候。

然るに知らざれば、井蛙(せいあ)に安んじ、鷦鷯(しょうりょう)の一枝を頼み候心持(こころもち)に御坐候。
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一、凡そ右、事変に従ひ、政を立て候義は、古今の通義に御坐候。

天地、古今、変ぜざれば止まず。


太古の代は、日本僅かに十八州に限り、奥州は未だ開けず候所、

追々地方を弁(わきま)へ、熊襲の征伐の後、□(闕字)皇后、自ら新羅を征し、

其の後、越の津軽の地、陸奥の地、次第に相開け、終に後世、松前・蝦夷に及び、

皆大抵事生じ、憂勤の及ぶ所、識力ともに挙り、終に太閤の征戦と相成候。


中葉、耶蘇(やそ)の邪教に懲り、規模狭小に相成り、唯一国を治める意なる故、
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終(つい)に海外の侮(あなどり)を受け候にて、以後の変、如何なるを存ぜず候。
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これは如何にといふに、昔、一室を治め候者、志(こころざし)僅(わず)かに鍋釜・妻妾に有り、

偶(たまた)ま、大盗至れば門を固め、墻(かき)を高ふして、内、妻妾に驕る、

大盗圧し来るの時、門墻越えざれども、一村、焼き討ち仕り候て、終(つい)に延焼に及び候、

所謂(いわゆる)、荘子の譬(たとえ)の如くに御坐候。


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一、ニイマンと申し候、近来、参り候甲比丹(かぴたん)、話にては、

イギリス海防の厳なる事、世界中の敵を一時に受け候ても、とても責る事能わざる由、推察に御坐候。

是(これ)皆、軍船の備(そなえ)これ有るを申すにて候。



一、ニイマンの逗留中、オルフと申す蘭人の申し候は、

イギリス、日本地方の島々を取り候間、御用心ならるべし、

いづれにも、火術 [火+段]煉(たんれん)ならざれば、防ぎは出来申さず候。

金弐百づつ下され候はば、火術に功者なるものを撰み、五、六年も留め置き、御教示申すべき由、申し候由。



一、西洋諸国、無名の軍は興し申さず候間、何れにも名を正する事を始と致し申し候。

ボナパルテ、阨入多(エジプト)を征し候時も、称し候事これ有り候。

渡海の妨げと不義の事と、数件の訳を申し立て候心得の由に御坐候。


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一、右の通、権を全地球に及ぼし候洋人は、実に大敵と申すも余りこれ有り候事にて候。

何卒此の上は、御政徳と御規模の広大を祈る所に御坐候。
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●慎機論 ≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒


況(いわん)や、明末(みんまつ)の典雅・風流を尚(とうと)び、干戈(かんか)日に警(いまし)むると雖も、

苟(いやしく)も酣歌(かんか)鼓舞して、士気益(ますます)猥薄に陥り、終に国を亡せるが如し。


嗚呼(ああ)、今それ、是を在上大臣に責んとすれども、固(もと)より[糸+丸]袴(がんこ)の子弟、
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要路の諌臣を責んと欲すれども賄賂の倖臣、唯(ただ)是、心有る者は儒臣、

儒臣、又(また)望み浅ふして、大を措き、小を取り、一に皆(みな)不痛不癢の世界となりしなり。
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今それ此の如くなれば、只(ただ)束手して寇を待たむ歟(か)。

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