2009年7月16日

やる夫で学ぶ柳生一族 その7(2)

<<1 | まとめ | >>その8

482 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:02:31.39 ID:HvBKXpE0
i| || :| :::i|li|::: |.リ|.j:|j|  ノ
:'、|| | :::イi|:: ノ/ /::リ| 、)ミ
-、;ヽi| |:l __ノ,≦:ソ_| ノ
弖マア::: クィ=弖;チ,/r)Y
 ̄''"´  |;;;`二彡 i、)'"
     |:::    リ)'i       又右衛門様…いや、殿。
   ァ::、, ):::   /       御下命、果たし終え申しました。
   ヽ;;:ノ   /        松田織部、討ち取り申したでござる。
  ,,、='ミ;   ;;'          
  ´:::ーー`  ;;            
   "   ,r''
、    ii
::`' 、,,i|
 庄田喜左衛門


   / ̄ ̄\
  /  _ノ ヽ_\
 |     (●)(●)
. |     (__人__)         …ご苦労であった。
  |     ` ⌒´ノ ) ;;;;)    加勢した皆にも酒など振舞ってやれ。
.  |         }  .) ;;;;)   
.  ヽ        }  /;;/     
   ヽ     ノ  .l;;,´     「はっ」
. /    ∩ ノ)━・'
 (  \ /|_ノ ヽ    
. \  ""  /_ノ  |     
   \ /___/  

 柳生家の苦難の発端である隠田事件。
その発端たる松田織部を討ち取った庄田喜左衛門は、その旨、新当主宗矩へ報告した。




483 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:03:10.77 ID:HvBKXpE0
         ∨三三三三三三三三三三ニ/
    __  lニ>‐ '´ ̄ ̄ ̄` ー<三三/      さて、前回、途中で話が途切れてしまったけど、
   〈三三二ニ―‐- 、 ___     `ヽ|      この隠田事件については、史料を読む限りでは
   ∨三三三三三三三三三三三三二二ニ¬  誰が直接の指示を出したかは不明なんだ。
     ヽ三三二ニニニニニ二二三三三三三/   ただ、柳生庄没収直後のことを記した記録によると、
     Y´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:\::.:`ヽ::<三/  
      ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::、::.::.ヽ、::.`、:l:T    「宗厳口をしき事に思い、
    |::.::.::.フ7¬‐、ヾ、:\>、:|-ヘ::.::.}::!:|      三人の息(厳勝・宗章・宗矩)に如何にもして汝等本領を安堵し、
     {::.::/代了圷ミヽ. \行‐t予l:ノ/::|      松田が首切て我にたむけよといひし」
      !::.::.::.:| ゞ-'′  \  辷シ '/:/::./     
     |::.::.::.:ゝ       ,       厶ノ::.;′      とあるので、少なくとも柳生庄没収後、
     ヽ.::.::l|ヽ、    r-、     /::.::/       石舟斎が柳生家復興を最優先させつつも、
        \:ト、:j> 、   _,.ィ:´::;:l:: /        松田織部への復讐も命じていたみたいだね。
          ヽ ` ,.イ `¨´ ト、レ'|/ |:/         まあ、家が潰れる原因作った相手が、
          __,. '´_>v< `ヽ、′        かつての同門の徒じゃ気持ちも分からなくもないけど。
     ┌イ  //了,ハ\\ヽ `┬ァ       
     /7 |  { く/ノ/引ヽヽノノ  | }-、       尤も、この時期、既に宗矩が家督を継いでいたと思われるので、
     /:.:.:.:{ |  `ー'´//l弓| |`ー′  | } :.:l     推測するなら、直接の指示を下したのは宗矩だったんじゃないかな。
   /:.:.:.:.:.{ |     // ]弓ト、ヽ     |「 :.:.|

484 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:04:32.32 ID:HvBKXpE0
   / ̄ ̄\    ) ;;;;)   
  /   _ノヽ_\   ) ;;;;)   
 |     (●)(●)  /;;/    
. |     (__人__)  l;;,´    「では、失礼致します」
  |     `∩_ノ)━・'      
.  |     |_ノ          …うむ。
 /ヽ    |  |_
 |  \_/ ノ ヽ
 |\     /_|  |       カラカラ、パタン
 | \ /  _/   

485 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:05:27.58 ID:HvBKXpE0

   / ̄ ̄\    ) ;;;;)   
  /  _ノヽ_\   ) ;;;;)   
 |    (─)(─)  /;;/
. |    (__人__)  l;;,´  (…正直、今更な話ではあったが、まあ、これもけじめだろ。
  |     `∩_ノ)━・'     常識的に考えて…)
.  |     |_ノ     
 /ヽ    |  |_      
 |  \_/ ノ ヽ
 \     /_|  |     
 | \ /  _/   


        / ̄ ̄\ 
      /       \     
      |::::::        |     (…俺が言うのもなんだが、
     . |:::::::::::     |      成仏せよ、松田殿…)
       |::::::::::::::    |      
     .  |::::::::::::::    }          ....:::  ..
     .  ヽ::::::::::::::    }         ,):::::::ノ .
        ヽ::::::::::  ノ        (:::::ソ: .
        /:::::::::::: く         ,ふ´..
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ――  
         |:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´

 こうして、隠田事件に端を発する松田家との遺恨は、
松田織部の死によって一応の決着を見た。

486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:06:11.83 ID:ZdBHlgs0
喫煙シーン似合いすぎだww

487 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:06:21.11 ID:HvBKXpE0
 さて、話は変わる。
この頃の石舟斎の門下に、一人の能楽者がいた。
名を金春(竹田)七郎氏勝という。

       ____
  /⌒´.::.::.::.::.::.::. ̄`ヽ、_
. /´.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.\ `ヽ、
/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\ノ
.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
.::.::.::.::.::.::.::.::.:/.::.::.::.::.::.|`─、_.::.::.::.::
.::.::.::.::.: ::.::.::.:|.::.::.::/.::./     ヽ.::.::.:
.::.::.:_.::.::.::.〃宀冖く_     ノ.::.::.::
.::.::/つ}__/yr===x     ヽ厶イ.::.:    先生、今日も参りました!
.::.::| fケ   ┤少、》     ___, /.::.::.
.::.∧ヽ    廴ノ    /て/.::.::.::.
∨.::|‐‐、         廴,イ宀冖′
.::.::.∧ ヽ        ノ   /
.::.::.::∧  \   `‐一   /
.::.::.::.::.:\   、_____/ ̄ト、
.::.::.::.::.::.::.:\/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.ハ
.::.::.::.::.::.::.::.::.:\.::.::.::.::.::.: .::.::ハ
.::.::.:/\.::.::.: ::.::|____|.: :|.::.::.ハ
.::/\_.`ヽ、.::.j|/   ∨:|:.::.::.::/
´    \__|.::./     ∨.::./
     金春七郎氏勝

       / ̄ ̄ ̄\       
     / ⌒ 三 ⌒ \      おお、七郎か。
    / -((◎) - (◎))- \.   いつも元気じゃのう。
    |   (((__人__)))   |    
    \    ` ⌒´   /    
    /             \

488 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:07:38.99 ID:HvBKXpE0
      ____ 
   /  ~~~\      
  /   - 三 - \    
/   -(◎)-(◎)-|     しかし、おぬしも変わっておるの。
|      (((__人__))) |   何故に四座のひとつ、金春流の宗家たるお主が
/     ∩ノ ⊃  /     こうも武芸に励むのじゃ?
(  \ / _ノ |  |      
.\ “  /__|  |      
  \ /___ /   

       ____
  /⌒´.::.::.::.::.::.::. ̄`ヽ、_
. /´.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.\ `ヽ、
/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::\ノ
.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
.::.::.::.::.::.::.::.::.:/.::.::.::.::.::.|`─、_.::.::.::.::
.::.::.::.::.: ::.::.::.:|.::.::.::/.::./     ヽ.::.::.:
.::.::.:_.::.::.::.〃宀冖く_     ノ.::.::.::
.::.::/つ}__/yr===x     ヽ厶イ.::.:    だって、私、剣術が好きですから!
.::.::| fケ   ┤少、》     ___, /.::.::.
.::.∧ヽ    廴ノ    /て/.::.::.::.
∨.::|‐‐、         廴,イ宀冖′
.::.::.∧ ヽ        ノ   /
.::.::.::∧  \   `‐一   /
.::.::.::.::.:\   、_____/ ̄ト、
.::.::.::.::.::.::.:\/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.ハ
.::.::.::.::.::.::.::.::.:\.::.::.::.::.::.: .::.::ハ
.::.::.:/\.::.::.: ::.::|____|.: :|.::.::.ハ
.::/\_.`ヽ、.::.j|/   ∨:|:.::.::.::/
´    \__|.::./     ∨.::./

489 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:08:23.88 ID:HvBKXpE0
               _, zュュz、
             ,. '"´┘ ``ヽ)         この金春七郎は、能の「金春流」の宗家(おそらく六十三世)なんだ。
     _ __   , ィ´       _ _」        金春流は大和猿楽四座のうち、最古の円満井座の出で、
  /"´  ̄ ̄``7´`7 ¨´   ̄ ̄`~~`7`ヽ      春日興福寺の神事能をやっていたことから
  |,. '´   ̄ 」_ヽ'"`^`^`^'' ー- 〈:::.:.:.:.\    柳生家との縁ができたのでは、と言われているんだよ。
  ',  ,. '"´,r > '^`ヽ江ユユェェ.、 l:::::::::::.:.:.',    
  〉'´   ,rんノ .:.::;::;.:i`~^ヽニ二二ノli::::::::::::.:.:',    元々、柳生家自体、春日神社の寺領扱いだった
  ヽ ,rんノ .::::::/:/:::|::::.:.:.:..:.:.:.:.|:.:|::|i::::::l::::::::::l   柳生庄の地頭として派遣された菅原永家を家祖としているから、
   Vんノ .:.;:::/.:ハ::::|::::::: 、_:_:l:_」:l:i::::::l::::::::::|   寺社との縁も深かったわけだしね。
    7:7,' .:.:/::/::/_ ',::ト、::\.: ̄.:``リ::!:::::l::::::::::|   (石舟斎の妹も春日の神人に嫁いで、そこからあの友景が出ている)
    |::|:l .:./:/.:7''"´ ',| \::>rr=そl:::!:::::!::::::::::!   
    |::|:l.:.:l/:::/,r=ニミ`    ヽ込ソ/l::|:::::!:::::;::;′   ちなみにこの七郎の父にして六十二世宗家、八郎安照は
    l/トト、.l.:::::,ヽ.いソ       ''|::|.:::l:::/:/    傑出した太夫であるにも関わらず、武芸にも熱心で、
       `ヽ:::::.ヽ ̄  `      |::|::::l/l/     後に大坂の陣に出陣するくらいの強者でもあり、
        |.:ト、:.\   o    ,. イ:/::/       石舟斎とも縁があったといわれているんだよね。
        |::| |:::::::「> --r<__ノl/::/ヽ _       
      「ハ^V^,:|:::::::|__ノ ̄``Y⌒ l/  ,rクヽ    七郎が武芸に熱心だったのは、
      |し'ヽV^ 、.:::L_ _ ノ人ヽ _ ,rク' ´⌒ヽ  この父親の影響があったんじゃないかな。
    /l `ヽ  ';   ``ー-‐'⌒`ー--‐'´     ヽ

491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:10:52.26 ID:ZdBHlgs0
千の仮面を持つ柳生剣士…仮面…ハッ!

ノッカラノウム!

490 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:10:02.04 ID:HvBKXpE0
         /ニYニヽ  
   (ヽ   /( ゚ )( ゚ )ヽ   /)     久しぶりの登場なんだっていうwwwww
   (((i ) /::::⌒`´⌒::::\  ( i)))   拙僧も一応新陰流の人間なんだからスルーしないでほしいっていうwwwww
  /∠_| ,-)    (-,|_ゝ \  あと、七郎には槍の印可を与えるっていうwwwwwwwwwww
  ( __  l  ヽ__ノ   ,__ )
      \   |r-_,,..、;  /
       |  | | .二二二二二二二二二 ̄ ̄>
       |  | |`|   |          ̄>./
       |  `ー'    |        / /
       宝蔵院胤栄        /  <___/|
                      |______/

 ちなみに七郎は新陰流の他、宝蔵院の槍も修めており、
また、春日から柳生庄までの数里ある道を歩いて、通い弟子していたとも言われている。

492 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:11:21.77 ID:HvBKXpE0
       / ̄ ̄ ̄\       
     / ⌒ 三 ⌒ \     能楽者たるおぬしが武芸熱心でも然程得るものもなかろうに…。
    / -((◎) - (◎))- \.   そこまでせずともよいのではないのかお?
    |   (((__人__)))   |    
    \    ` ⌒´   /    
    /             \

 r /   ll
/ ∨    v'⌒\ヽ、\ ヽ_ノ
ヽ    i'⌒   ノ/不 ヽ ̄ヽ/⌒i
./    ヽ___ノ    ヾシ ノ`  ヽト l     いいえ あたし
   ヽヽr<    '``  lj  /   
ヽ  ヽニノヾシ, _ , -‐- 、  /       剣士になります!
 \   ヽ   ` /     ヽ{
   ` ーヘ   ヽ      ハ 
       `、   `、   / /\      新陰流の剣士になります!
          \      / / ヽ    
         ` ‐ 、._/〉/  ト-'    
         /i  /  ヘ   `フ
         ヽ`二 ,r‐‐ヘ       
          ヽ二 | r==rj===、    
           | | ヾ=/∧ヽ=’
        「 \ ヽ.| | |.| | |
        | i、lヽ ヽ.| レ ヽ!
       /'  ヽ} \ |
       |      |!
       |      | ヽ

493 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:11:51.96 ID:HvBKXpE0
      ____ 
   /  ~~~\      
  /   - 三 - \    
/    -(◎)-(◎)-|    …やっぱり変わっておるのう。
|      (((__人__))) |   まあ、筋はいいから、教え甲斐はあるがの。
/     ∩ノ ⊃  /    
(  \ / _ノ |  |      
.\ “  /__|  |      
  \ /___ /   

494 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:16:14.56 ID:HvBKXpE0
             ____
            /\ 三 /\
          / (◎)-(◎) \      
         /::::⌒(((__人__)))⌒:::\   
.       ┌────────────‐┐
       .|                   .|       与えるお!
   ,. -‐ '|                     |
  / :::::::::::|                   .|__
  / :::::::::::::|        免許状      rニ-─`、
. / : :::::::::::::|                  `┬─‐ .j
〈:::::::::,-─┴-、                   |二ニ イ
. | ::/ .-─┬⊃                     |`iー"|
.レ ヘ.  .ニニ|_____________.|rー''"|
〈 :::::\_ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:::::::: /::::::

 実際、この金春七郎の腕前はかなりのものだったらしく、
慶弔六年(1601)、石舟斎は七郎に免許を与え、それ以後も目録や印可を与えている。

 なお、この七郎に与えた免許や目録は、今も奈良・宝山寺に遺されている。

495 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:17:00.31 ID:HvBKXpE0
 そして、金春七郎と石舟斎…というより、金春家と柳生家の間では、
家同士の付き合いもあったようで、後に、ひとつの提案がなされることとなる。

    /二 丶 ヽ、   
   、 { i'⌒ヽ、ヽ、 }     
   ヾ´` ̄`ヽ  ! i     
   ! | | | | |   !,イ l      
   ! | | | | | l、 !、    
    ! l | | | |ヽ、! |ヽ     
     ー-= _二_二 ̄\、  
      ,.-‐,ニニ,, ヾく  !二.
     /  ,'il|'^il! ! l!ニ i'⌒ヽ   先生!我が金春流の秘伝書を持ってきました!
     !   i' )゚0シ' ,ヘニ レヘ l   これ、新陰流の奥義と交換しませんか?
      i   ゞ≡ ^   ,'ヽ !/
     |i    `ヾヽ  ,'`じ'/ 
   _,.ノハ        ,' / 
   ヾ゙´        ハ´ヽ  
            ,イl |   
  / ̄\     /i | l 丶  
  レー-、 \  /| l l ヽ  \
、 {_ 、  `'ーY   ! l |  ヽ  
  {  ` ̄` /   ! ヾ   丶
 { ` ̄`ー  〉   |   \   
 ヽ  >‐  !   i、      
  `7   /    `ー--- 
   |   /           /

496 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:17:34.84 ID:HvBKXpE0
     ____  
   /      \
  /  _ノ三ヽ__\     
/  -((◎)-(◎)-\   …七郎、それ、どうしたんだお?
|     (((__人__)))  |  
/     ∩ノ ⊃  /   
(  \ / _ノ |  |      
.\ “  /__|  |  
  \ /___ /


    |: : : { : : : : \: : : }∨:| ヽ::}     ノノ | : | :| : : | : : : Ⅳ
    /: : : ヘ: : : : : : | :》:〉‐レ‐‐レ'    ‐' ̄メノメイ: : : | : : : 〉
    |: : : : :\: : : : :|ノノzrfz、     r=7ヽ}-、 イ: /: : : /
    |: : : : : : :〉: /{{迯zノ》       ソ赱リノ  レュ: : : /
   /: :/: : /`l〈    ヽ-'            `─'   |/ |:| ̄     はい!家にあるのを持ってきちゃいました!
    |: : | : : {^ 〉|                  /} /:》、
   /: :/: : : \ヽ{         、        |_/: : : \
   | : | : : : : : \ム     _____       ノ: : : : : : : \
  /: ::| : : : :| :| : : ∧    \──‐ノ     /: : : :\: : : : :  ̄`──-、_
/´: : 〈: : : : | :| : : : : マ、    ` ̄ ̄    /: : : : : : :\__: : : : : : : : : : : : ̄\
: : : : : /: : : : \: : : : : | \_        /: : : : : : : : : : : :\__: : : : : : : : : :\_
: : : : ::| : : : : : : :\: : :ノ    ` - 、_, - ': : : : : : : : : : : : : : : : : :\\: : : : : : : : :
: : : : ::\: : :\: : : : :/          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|  \\: : : : :
: : : : : : : \: : \: : : : :\_         |\_: : : : : : : : : : : : : : : : \   } | : : : :

497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:17:55.15 ID:npsP/Uwo
交換て!? アリなのそれ!?

498 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:18:09.12 ID:HvBKXpE0
=その頃、金春家=

        ,. ___,,.-‐‐''" ̄ ̄ ̄`゛ヽ             ┼─
       ( ('"´ニヽ/        `゙ヽ、         └─ 
      /, ,. ⌒〃 ⌒ヽ          }、        臼|フ
     / / / ,-ニi⌒ヽ }          ヽ          ム|っ 
     i { {  i`゙''"´´{ {  i  i | ヽ、    i        ・
  i、  j l ヽ! l| | | | | ト、ヽ、ヾ、 ヽ、___ヽ   |        ・
  ヾ、ニ'ノ }__ノリ| | | | | | |ヽ__,,.-‐`゙ー、ヾ、   {           ・
    フ  人`゙''=、! ! ! !__,,. =ニ=‐--'_|||| レ-i \!       尹
    {  ハ ヽ'" ̄ヽ   ''ゝ _,,.<   l' l |ヽ、_}_       ロ
    ヽ/   { ´ ̄ i    ´ ̄`   i  { l\ j        っ
     `ート、_', ||||j          lj r_人 ヽ}      ---,
       ヽ、二',  j_           /ヾニヽ  }      (
         `ー-', `丶         / ,  `ヽリ\     フ
           ',  、__,.. =-     / i     /  \  ‐┼‐
              `、  ‐-     / /     /    `ー  '
            `、       , '  /   /        | ┼
              ` 、   _/   /    /           l の
              /` ̄´{   /    /           ・
      ________,,,.-‐''/    j      /           ・
 _,. -‐''"      /    //ヽ   {`ヽ            ・
          七郎の父・金春八郎安照

499 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:19:11.65 ID:HvBKXpE0
     ____  
   /      \
  /u _ノ三ヽ__\     
/  -((◎)-(◎)-\   …それって大丈夫なのかお?
|     (((__人__)))  |  (つか、奥義の交換をしていいなんて言ってないお…)
/     ∩ノ ⊃  /   
(  \ / _ノ |  |      
.\ “  /__|  |  
  \ /___ /


    |: : : { : : : : \: : : }∨:| ヽ::}     ノノ | : | :| : : | : : : Ⅳ
    /: : : ヘ: : : : : : | :》:〉‐レ‐‐レ'    ‐' ̄メノメイ: : : | : : : 〉
    |: : : : :\: : : : :|ノノzrfz、     r=7ヽ}-、 イ: /: : : /
    |: : : : : : :〉: /{{迯zノ》       ソ赱リノ  レュ: : : /
   /: :/: : /`l〈    ヽ-'            `─'   |/ |:| ̄      ハイ!大丈夫です!
    |: : | : : {^ 〉|                  /} /:》、
   /: :/: : : \ヽ{         、        |_/: : : \
   | : | : : : : : \ム     _____       ノ: : : : : : : \
  /: ::| : : : :| :| : : ∧    \──‐ノ     /: : : :\: : : : :  ̄`──-、_
/´: : 〈: : : : | :| : : : : マ、    ` ̄ ̄    /: : : : : : :\__: : : : : : : : : : : : ̄\
: : : : : /: : : : \: : : : : | \_        /: : : : : : : : : : : :\__: : : : : : : : : :\_
: : : : ::| : : : : : : :\: : :ノ    ` - 、_, - ': : : : : : : : : : : : : : : : : :\\: : : : : : : : :
: : : : ::\: : :\: : : : :/          /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :|  \\: : : : :
: : : : : : : \: : \: : : : :\_         |\_: : : : : : : : : : : : : : : : \   } | : : : :

500 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:19:40.82 ID:HvBKXpE0
     ____  
   / u    \
  /  _ノ三ヽ__\    
/  -((◎)-(◎)-\    本当に大丈夫なのかお…?
| u   (((__人__)))  |    なんだか不安になってくるお…。
/     ∩ノ ⊃  /    
(  \ / _ノ |  |      
.\ “  /__|  |  
  \ /___ /

         ____
       /::::::::::  \       しかし、気になるのも事実じゃお。
      /::::u::⌒ 三. ⌒\     遠慮なく読ませてもらうお!
    /:::::::::: ( ◎)三(◎)\  
    |::::::::::::⌒(((_人__)))⌒| ________
     \::::u:::   ` ⌒´   ,/ .| |          |    …これが金春流の秘伝「一足一見」かお。
    ノ::::::::::         \ | |          |   これはなるほど…剣に通じるものが…。
  /::::::::::::::::: u           | |  一足一見  .|   しかし、能を剣に転ずることができる、という閃き…
 |::::::::::::: l               .| |          |
 ヽ:::::::::::: -一ー_~、⌒)^),-、   | |_________|    七郎…
  ヽ::::::::___,ノγ⌒ヽ)ニニ- ̄   | |  |

501 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:20:15.31 ID:HvBKXpE0
ヽ、__ /         `ヽ/  `ヽ  \
`ー,.   /  /      ヾ〃ヽ   ヽ  〉  \\ |
/   〈   {   { {  i'ヽ/`i/ /  / }  {  _、// |
     ヽ  `ーj } } {   { /  ノ /  `ー' i
  ノ  ノ`ー-‐'ノ ノ ノノ   !_l i { {   _,./    エ凡
 `ー-‐' \__,/ノノ‐-' ,,.-‐''`‐-`!`ー`-- 'ヽ     ハ_ヽヽ
    i/ / / ((_j }  / ,.-‐‐‐‐,'/i i | } ヽヽ
     {  { ゝ、_,.ノ  l| `‐--‐'、i/ ノ ノ ノ ノ ノ   |
    `ヽ`ニ-‐ノ   l|    il|||jノノ ノ- ' /   `ー '
   ノ  `---'"   ili;    ||ヽ__,./`ー-'{      l
、__/ ノ ノ ノ }  ,.   '" ヽ /||ヽ__,./i / ヽ_,.i   レ  ヽ
ヽ__/_/ .ノ-'   { { ̄ ̄} } / /ヽ__,./ヽ{ i  ノ    フ
`、_/_/ノ-'ヽ.    '、___,ノ  /| ヽ ヽ  } ヽ"    ‐┼‐
  `ー-‐'‐-‐' ヽ    --  / l  }  }  }  |     '
   `‐-----‐' `ヽ ___ /   l / /  /  /     | |
    ヽ _____ノ |         l' /  /  {     ・ ・
          ↑石舟斎

 こうして、柳生新陰流に、金春流の秘伝「一足一見」が伝えられた。
これに対し、柳生新陰流からも「西江水」の奥義が伝えられたという。

502 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:22:07.98 ID:HvBKXpE0
                     _ _
       r‐<二二ニヽ-─-ィ´-─‐〈        さて、この話、実際に秘伝を交換し合ったかのか、
        Y´ ̄  ̄``ヽ:.::::.:.,r'´  ̄ ``}      及び、そもそもどちらが言い出したのかは不明なんだけど、
         入 -‐ ニ二ニミ「``1二ニ二ニヽ      後の宗矩の筆による記述に、
      /.:.:.`Y´    ,.ィ.::::ト.、    ,j|      
      ,′ , .:.:::lL __ ,.イ:1:::::::|::.:`ー-‐'^K:ヽ     「一足一見の事、理あり。金春流の謡能の心持に有。
      i.:.::::i  .:.:.:.::::::::::l.:|::::::::|::!:.::::ヽ::.ヽ:.:.::!     是、兵法に実、面白き事也」
      |.:.:::|.:|.:.::::::l/.::/〃:ト、://.:.:::::::::|::::::|::|:|    
      |.:::::|::|::i:.::/.::/.:」⊥:::/`ヾ:.ー-::|::::::|::|:|      と書いてあるそうなので、少なくとも、
      ト、::|:::|:|:/.::::仁l:/|::/   `二ニ,'::::::l://     少なくとも、金春流から柳生新陰流に「一足一見」が伝わったのは
       `ト、::k:::::::iヾニテ`   rテ'/::::/       まず間違いないと思うんだ。
          `ヽl::::::`、 ' ' '  ′' 'イ:::/         
     _r‐<ト<´\:::::lヽ、 _二 イ:「l:/^ヽ        ただ、「西江水」の方については、史料が不明瞭な上、
  _/.    `L1   ヽ| ` Y´ .:.:.:.:lノ  .::.\      この奥義を悟ったのは石舟斎の死の直前、という逸話もあるので、
 〈:.:.;':.      L1ト、_ _人 _ _/|:.:... ..:.:::::i:|     そちらが金春流に伝わったかどうかは不明なんだ。
r‐」.:i::::::.:.:.:.:. .:.:.;:イ厂ニ二ニ二ニY^!::::::.:.:.::::::::」

503 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:22:36.25 ID:HvBKXpE0
             r==‐-、
           〉-‐ー-ミヽ __  _ _
        , ィ''"  ̄ ̄`ヽ}「 「´~~``i     ちなみに、この際、石舟斎と七郎が相弟子になって、
        /,  ヽ,′_.-‐'´⌒L`ヽ\|    そこで秘伝を教授しあった、という記述があるので、
      /.:./:::.:.:./.:.::::.:.:.:.   .:.:::.\ 〉〉   上で書いたような、秘伝書を勝手に持ってきて云々、というのは
      /:;:/l::.:.:./:./.:/.:/  .:.:.:.:.:::::::V/     まあ、フィクションだと思っておいてください。
     l.:.|:|::|:.:.:.|_/_/_/ , イ.:::/:::/l.:.::::',    (大体、流派の秘奥って伝書読んでどうなるって類のもんでもないし)
     |.::l:|::|::::::|ゞ=、// /、/.::/./.:.:,:::|     
     ト、.:l::|::::::| 辷シ    rミ:/:/.:.::/:/      あと、余談であるけど、後に老年に達した宗矩は、
        `ト、::.:.', ' ' '  、 tシノノ::::/l/      非常に能が好きで、他家に押しかけてまで能を演じ、
    __   ヽ:::ト、 rっ _ノl:::/l/        たいそう嫌がられた、というか迷惑がられたと言われていて、
  /   `ヽ_|:::厂丁l::/l::::l/^ヽ         そのことで沢庵和尚からも説教されているんだけど、
  /:::.:.       |/_入二|:/    .\       こうしてみると、案外、宗矩の能好きは、石舟斎の影響もあったのかもね。
〈:::::.:.:.   .::::lrr-‐ー‐ー- ┐ ..:.:::.ヽ      そうでなければ奥義の交換とかいう発想はないだろうし。

504 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:23:31.35 ID:HvBKXpE0
: : : : :/: : : : : : / ノ: :/: :人ノ: :/     \: : : : | : : : : : : |
_/: : : : :_/∠/// ∠ノ\__     |: ::/: : : : : : ::|
: : : : : : /   rテ≠苡ホ》zュ、      \_|∠ノ: : : : : : : |
: : r─'´     \ {ヒトィzノ} ヾ      \_| : : : : : : : : ::/
: :/         `‐-、__ム       人_ヽ| :∠: : : : : :/
: :|                       /《ゝ: : : : : : : : : ノ
: :|                    ヽ{{イ: : : : : _/
: :|                     \}: : ::/     無念…伝説の演目で新陰流を……
Ⅵ                        〉Ⅵ
                          /|
\            ___       / ノ
               ̄`─、_   /
                       イ
    \               /::}
     \             /: : ::ハ
: \    \_        /: : : : : : }
: : : \     >-、__/: : : : : : : : :|
: : : : : \   /: : : : : : : : : : : : : : : : : :/

 しかし、そんな能楽者にして兵法の達人という、
なかなか伝奇力強めなこの金春七郎、慶長十五年(1610)、若くして亡くなってしまう。
享年35歳。

506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:24:23.34 ID:yQEDaG2o
紅天女には届かずか…

513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:30:18.65 ID:npsP/Uwo
伝奇力強めww
確かに面白い素材だな……

505 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:23:57.45 ID:HvBKXpE0
                     /´ ̄ ̄ ̄  ̄ ヽ
                    /           \
                       /:::::             \        
 _______ +      /:::::::::                 ヽ       七郎……ッ!
 |i:¨ ̄ ,、    ̄¨.: i       |:::::::::::                    |      惜しい…ッ!実に惜しいお…!
 |i: /ヘ:\     :i|     _ |::.:. : :     ,,ノ三ヾ、       |
 .|i:〈`_、/´_`>.、  :i| ,.r:;'三ヽ:: :: . ー'""´   ,,、  ー‐‐,,     /`、  
  |ii~~'、;'´`,'~,;~~~~:i|;イ:;:"":::::::::::\;;(((ー一)  (ー一)))。;:;:. /::::: ヽ
  |i`::;:':::::;::;:'::::::::::;.:i|`。⌒/7, -──~ 、((___人___,)))⌒;;::/::|:::::〆::\
  |i::::::;:':::::::::::::::::::::::i| ::::://,::::..    "" ニニヽ、⌒ij~"";_ ィ /:::::::|:::::〃::: : ヽ
─|`ー=====一 | ::::::|_|;;、:::.__y-ニニ'ー-ァ ゚‐─'───┴────── ‐
::::::`ー―――‐一´ ̄~   ̄       ̄

 石舟斎はその才故に、これを大いに惜しんだという。
実際、この七郎が、後の十兵衛三厳の幼名の由来である、という説すらある。

507 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:25:56.12 ID:HvBKXpE0
 さて、エピソードが続いたところで、話は本筋に戻る。
柳生家を継いだ宗矩は、家康のところへ戻ってきた。

   \      ,..''  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  __,,,,/    /  |
  |   \        ` .、::::::::::::::::::::::::::.,-‐'"'"     /    .|
   i    `'''ヽ、       -:::::::::::::::::::      -‐'"'" /    /    
   `i    |  `、'''ヽ、、     .ヽ.Y    , ..-':''" ゙/   /   ../    
    `、  |    `、  (:、、   . .|  ,..-')   /   /  ‐-‐'      ホホホ…宗矩、”立派”になって戻ってきましたね。
     ‐-‐'| \  `、....,,,`_゙ヽ_、_,| ノ、."..-'''''''" // .. /       私も嬉しいですよ。
       |  \\γ .,--‐-‐ "゛"゛‐-‐'''"゙'' |///  /        
       `i| \\ |        、      |///  /\`i      
       /`i  \ |   < ___ ゙''-''"'_,,,, >.. |///. /   `、     
     /   `i\\|     ヽ゛⌒⌒/゛   |/ / /           
          `i \|     `.、__ ノ     //.-
           ~\      ‐'''''‐   / '
               \      /
                 "'''゙''-''"~
                徳川家康

         / ̄ ̄\   
       /    \ /\
       |    ( ●)(●)     
       |     (__人__)     ……ははっ。
         |     ` ⌒´ノ     
         |         }
         ヽ        }
    /  ⌒ヽ    '´(  
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.

509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:27:07.35 ID:ZdBHlgs0
相変わらず家康さんkoeeeee

508 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:26:34.02 ID:HvBKXpE0
             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /  
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ      ときに宗矩、
         \_      ゛゛Y"""     __ノ            
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l        あなた、私の近習を辞めなさい。
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ      
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´       
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i


   / ̄三\  て
 /:::u:::_ノ 三 \ そ
 |:::::::::::( ○)(○)  
. |;::::::::::: (__人__)   .  な…なんですとッ!?
  |::::::::::u |r┬-|     
.  |:::::::::::  `ー'}   
.  ヽ:::::::: u   }
   ヽ:::::   ノ  
   /::::  く  
   |:::::   \  
    |::::   |ヽ、二⌒)

510 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:27:28.59 ID:HvBKXpE0
     //            //  そんなっ…!
    / / __,‐⌒ヽ、       //  バカなっ…!  バカなっ…!
   / / /   '─ \    / /   常識外なっ…!  ありえないっ…!
  //ノ ノ-、 (○つ\  / /   新陰流が…!  こんなことがっ…!
//  | 。(○)  、゚ ヽ, ヽ l l   どうして……  殿の近習を…
/   ヽ Uヽ__,,,トー'i   )| |  あってはならない……!  常識的に……!
      ノ    ` ⌒''  ノ | |  どうして… 柳生家が…
    (           } ノ ノ  こんな… 再び没落…
     ヽ         //  こんな…
      ヽ      //      こ ん な こ と が っ … … !

511 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:28:13.71 ID:HvBKXpE0
    /i||||||||||||||||||iヽ       
 / ̄ヽ||||||||||||||||||||||||iヽ                  
'""ヽ  ヽ!|||||||||||| ||||||! ヘ 、― /    
||l   ___ヽll,‐''''__ゞi .||||||   
||l  /ヽ、 o>┴<o /ヽ\||||||     ホホホ…、話は全部聞きなさい。
ヽ‐イ  |ミソ ̄'"ノ"/li゙ ̄゛l;|l |、     宗矩、あなたには私の跡継ぎ、秀忠の剣術指南をお願いしたいのです。
.\/l  .|ミミl l―――フ..l;ll /      
 .\ノ  |ミミ.l..\=ヲ/ l;|/    
   ̄\ |ミミ.l..  ̄ ̄,,,l;/     
   l \ヾ゙゙....  ̄."/i     
 _/_``\ ̄、 ̄/ /l___  


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ○)(○)   
. |   i||(__人__)    …さ…左様でございましたか。
  | u   ` ⌒´ノ   (さ、流石に焦ったぜ…)
.  |         }
.  ヽ        }    
   ヽ     ノ    
   /    く  \       
   |     \   \        
    |    |ヽ、二⌒)、

512 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:29:29.43 ID:HvBKXpE0
           ━┓
    ___   ┏┛
  /  ヽ__ \  ・     …いや、しかし、秀忠様には、
  |ノ  (●)  \     既に小野忠明殿がご指南役としてついておられる筈。
. | (●)   ⌒) \   かの御仁は一刀流の正統を継いでおられる無双の達人。
. |   (__ノ ̄   }    
   \        }     あれ程の達人が既についておられるにも関わらず、
    \     ノ    それがしに秀忠様へ剣術指南をせよと仰られる…
    /´     `\    …なにか、ございますのでしょうか?
     |        |

514 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:31:38.80 ID:HvBKXpE0
      、::/   .:.   、      `ヽ:::::::/
        ,イ   .:,:.:、ヽ:.. 、ヽ:. ヽ:.:.    Y
.       /,    `/メ、ハ\ヽ,ヘ'´!ヽ:.!  ハ      さて、ここで秀忠の剣術指南役にして一刀流の正統を継いだ剣豪、
      l/! i  :.Xf_Tト \  イT::l7!:! .;: !:!    小野次郎右衛門忠明という人物についての話をするよ。
      ' N ::.: { ゞ=' .:! `  ゞ=' 7.:/: .:lリ    
       l:.:i:.ゝ    r -、     ノィ'::::.〃      ここから少し長くなる(&地の文の解説も増える)けど、
          !:ハ:.:\  ゝ-'     〃:::;:'/      これは「小野忠明」というある意味非常に分かりやすい
       _' ヽ:ト:!ヘ.. ___ .. ィi´/:::/レ       「剣術指南役」を紹介することで、
      ,ェヘ`ヽ-‐ '´ ̄ヽ.  lル' レ'        「柳生宗矩」という人物と、他の剣士との相違点をわかりやすくする、
.      ,イ;:;:;:;:;:`7_、   , -‐ホュヽ<ュ        という意味もあるから、許してね。
   /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;rハ  iイ´/ハヾ! ハ7z、

515 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:35:57.50 ID:HvBKXpE0
                                   ,、∧ハノ丶人/ヽ'lノi_
                              ノlヽノ) /ヽ'   ) ノ  i フ ̄i_
                           iV!/l .| ! /!./ !,/-‐'ノ ̄ノノ;ノ ノ_
                           l,|.i_ノ /',i/ ノ-'"ノ' l 'ノフミノ)彡 (
                           iv'ノ '、 / ',/"./ . ノ, -‐ー'ヽ`>ニ >
                         .i、 i、| /   Y./ヽ、, '", ;;彡'"二i'⌒ヽ"、二ニゝ
                       、| ` 、ヽ`ミノニヽ/" `゙ー''彡三| lミ、.i_, ゝノノ>
                         _iヽ‐-ヾ、,、 (,,`ヾ       ミ` ` l`''ヽ  `ゝ
                  ____ヽ_`_、-,'`;;| `‐-`, '"         ヽノ">ヾ!` \,'"
                  ',` 、  ___ヾ;;__/l,ヾ! i. /,' ./l!        ヽ ' ,   /:.:.:.:.:.:.
                  ', `./ヽ ___|;!'、  '、/;i ."'゚./             `  ヽ  |:.:.:.:.:.:.:.:
                     .', ./ ./`、  ! \.ヽ `:::、               ,'',  .', ,ノ:.:.:.:.:/
                   '/ /   ヽ. ` .゙i/ヽ,_            /::::!   !:.:.:.:.:,':.:.:.:
                    __ヽ,, ' 、-‐、 \  `"'|   ._)     ,,    ./:::::',  ノ:.:.:.:./:.:.:.:
-、,r―、     _ ,,   -‐ '' "`  `  `、 `  ヽ  \_.、 ;:_,,"   /    ./::::::::  ./:.:.:.:./:.:.:.:.:
  .i.(~ `ヾ、''i´ ',  ',  ',     !   !   ! .!  i   / \. `" ̄ヽ_/ /      :::::::::: /:.:.:.:./:.:.:.:.:.:
.__ .|._ヽ、,  `i  !  .!   !   ノ  " __ノ_'__.ノ. /   `>.-―‐ `''、    .,/ ,-‐、:::,.':.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:
i__iノ'i__'/‐-、.| __' ,, " -‐   '''   " ̄   .\. /   //' , ̄ ̄  ヽ,__,,'/―ー''":.:.:.:ノ:.:.:.:.:.:.:.:
., '"  ー--、|                   ヽ.    //  ヽ    ./:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.,/:.,':.:.:.:.:.:.:.:.:.
゛ _,,,, 、   ,'                    \ ./ ' 、   ',  __, ',,_:.:.:.:.:.:.:.:.:., ":.:.:/:.:.:.:.:.:/
,"   `ヽ、/                        ゛ ̄ ,` 、 .'、/:.:.:.i !:.:.:.,  '":.:.:.:, ':.:.:.:.:.:/
.- -、 /                       ,ノ:: ̄:::::/ l `/:.:.:.:.l !/:.:.:.:.:., '":.:.:.:.:.:.,'
- -ー‐ヽ                         , " ._,,   '" ヾ{二ニ ,,_| -ー '":.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ
                               小野次郎右衛門忠明

 小野次郎右衛門忠明は、この時期、六百石で秀忠の剣術指南役として仕えていました。
徳川家に仕官したのは宗矩より早い文禄二年(1593)。
永禄十二年(1569年)生まれということなので、年齢は宗矩より2歳上になります。
この時点(慶長六年(1601))だと32歳。
(永禄八年(1565)生まれで6歳差説もありますが、その辺、詳細は不明)

 そして、彼が修め、秀忠へ指南していた流派は「一刀流」。
後に彼の家の名を冠し、「小野派一刀流」と呼ばれることとなるこの流派は、
柳生新陰流と並び、将軍家御流儀として、江戸時代において「二大流派」と呼ばれることとなります。

516 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:36:17.06 ID:HvBKXpE0
    \   \     ´ ̄,ア'´  .: : : : : : : : : : : : : :.`.: :、:`: .、,
     \   \     ./ . : : /: : : : : : : : : : : : :\ : : :\: :  ̄二:フ′
.         \   \ / : : ; /.: : : : :ハ小、.:|.:.:. :.ト、: :\: : : \: :\
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.           \   \/_|: : : :|:| : ||/ィテ守Vリ: :ト、.:. :\:.ハ:.:.:|  ヽ,j
               \.  マ!:.: : :|八:从_とxク  Ⅵ_込;.:. : :ハ:.:}
             | \.  \:.:.|.: :.Ⅵ `     r'汀):\( ∨
             |:.人\   \.: .:.:ハ,      , k.ツ/: :.:||`
               j/  V|:\   \:| \  __   /: : :.:|{
                  !人i\   \     ‐`  /.:. : :.:ハ、
              , -―く二从 \   \   ,..イ:.:.|.: : :.| \
              /:,:.-‐:┼:‐:-、\ \   \´  |: :ハ.: : :|    l^Y^i^h
           /. :/ : ; -┼:‐:-:、.:.:.Yl^\   \ j:/ ヘ,: :!     | !. l. l |
         {.:.:.:i : :/:./ ̄ ̄\: : }}\||\  \   )人   n! !. l. l |
.           |:‐┼┼ l.: :/ ̄ ̄`'く{辷儿ィヘ.   \―-..__/| |、   |
           )、:.|.:.:|: :{: :{、      `'<_人んヘ.   \  /  | ヽ.  |
           ハ:辷:!:彡、;:\        ` 、.,∠\   \_、 '(    ,ノ
         |  ∨: : : / ̄¨`' 、         `' 、 \   \_>'ーァ‐'’
         {   `'ー'’//    \           \ \  xク  ハ、
            \    ´  ′       \           YV彡'′,.イ^)yヘ.
             \            /`¨T ‐- ._ /   , <ノ / ハ′
        ┌――‐)          /   |      `{_,.<   _// 人
        |   _,{   \           |            \. ´ / 人
           〉  -―ク\  \       ハ、          `'ー-く   \
        〈   /:.:.::人           \,__             \   \
           \/.:.:.:.:./  \                ̄ ̄ ̄ ̄\      \   \

 ちなみに現代剣道は、一刀流を祖とする幕末の名流派・北辰一刀流の影響を強く受けており、
故に一刀流が剣道に与えた影響は大きいと言え、そういう意味でも堂々たる大流派であります。

517 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:38:10.78 ID:HvBKXpE0
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彡 i、;;;;i、::: __;;{:::    }|{      :;;;_,,,,-‐''/彡   :::::::   );;;:;/::: ヽ
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            :::::::: ゙'''‐-''¨''''‐‐-‐-‐-'´        
                伊藤一刀斎景久

 そして、この小野忠明が宗家を務める一刀流の祖は「伊藤(伊東)一刀斎」。
名を改める前は前原弥五郎といい、生まれも育ちも不明なところの多い人物ながら、
(生年は天文十九(1550)年とも永禄三(1560)年とも言われ、
 出身も伊豆国伊東説、伊豆大島説、近江堅田説と様々)
その経歴はまさに「剣豪」以外の何者でもなく、
比較的名人系のエピソード(要するに"戦わずして勝つ"の類)が多い塚原ト伝、上泉秀綱と比べて、
その生涯は戦いに満ちており、まさに「生涯現役!」という趣の人物であります。

 伝書によれば、諸国を巡り、刀術者と三十三度の試合を行って、その全てに勝ったと言われ、
その最後も謎が多く、まさに終生剣のみに生きた大剣豪といえます。

518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:39:54.49 ID:ZdBHlgs0
一刀流剣士はバケモノか…

519 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:40:05.81 ID:HvBKXpE0
           三_
           <      ,、
           三<    ノ:::\___
          ミ、-`  /       `ヽ、        _
          ヽゞ   / 、 | レ'__,、--‐  ヽ   ,、-‐'"   )
    ハ| | | ト!ヽ!  /  _,、-- __        | /     /
     WV` ヾ!  | '´   /  ``ヽ、    ´   ,、-'"
         r‐rキ‐|   /  ノ \      ,,、-'"
        / ヽ_ ヽ、            /    _
          ̄``ヽ  ``ヽ、        /   / |
      人___人   \   `     ``‐- 、  / |
    /      ヽ-イr‐\           `゙   |
   /      ──ァヽ、_ ト        \ー-- '
   } _|__ イ__   /   /  |           \
 / ./|┌┼┐  エ  ト==.!            ヽ
 \.   | l二l二! ヽ  / .> ,⊥___            |
   | 、|   |  ─ '"  |ヽ、|   `         |
  /  ─┼─  ヽヽ  /> __|            /
 /    ○   ___/| (   r──‐- 、.__    ヽ
  \    ノ    ヽ  ヽ \__ノ        `ヽ   ヽ
   | />/> ─‐ '"   >             \  ヽ
   / ○ ○   / ̄/ ``/   鐘巻自斎
    ̄`ヽ        /   /

        _,l;;;;;;;;;;;;;l,,_
      ,.r'´;:  八  '::..゙ヽ
      ,.'___ _立_ __;;ミ゙;、     フT
      l厄巳厄 i王i ,.巳厄巳l     夕 ヒ
   ,.-'l i,.:'  ヽ:.、 ;.:' ' ヽ |,.、  
   /{´iY´ヾーtッ-ヽ'' kーtr-,'´lri   _l_
   {_i,入::.. ` ̄ ̄,'i!ヽ;` ̄´ ゙::.}rリ    i,_
   ヽ_ノiヾ ;:. _ i': ll!:,ィ ._ .: j,ノ
  ッジ::;;| ,r'´;;:> ̄弋´;;::ヽ;r1:゙'イィ   ┬‐宀
  弍::::::::l i':;r'´ ,.-ーー-、.ヾ;:;i. |:::::::ス   ノ□隹
   彡;:::l l::l  '  ---;:, ゙ l::l |::;;ャ`   、
   ,r',广ヽl::l ::. .:   ゙:.  l:lノ^i`、   三刃
  ,イ(:::j   i::iヽ  :.    .: /l:l'" l:ヽヽ  口心
 |;:;.\\ l::l  ', :;:::..::. /  l:l,r''/;::;;|
         唐十官

 一刀斎はエピソードも多く、伊豆大島から格子一枚に頼って泳いで三島まで泳ぎ着いた、
三島神宮での富田一放との立ち合い、盗賊を瓶ごと斬ったことによる古刀を瓶割刀と命名、
富田流(中条流・鐘巻流)の達人・鐘巻自斎に弟子入りし、後にこれを破っての一刀流の創始、
唐十官を名乗る中国拳法(or剣術?)の使い手との決闘、大谷吉継のところでの剣術指南、
秘剣・払捨刀、夢想剣を編み出した話など山盛りであり、実に面白い人物であります。

520 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:44:54.02 ID:HvBKXpE0
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    ::::::::::::    /::::::::::::::;`::.:‐:::丶::::丶    :::::::.::::.    |
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         l::.::;':://:八::ト、::\::.::.}::.::.|     ::::.   |
          |::.::レ':∠ -ヘ:ヽ`≦ニ|::.::.|
          ∨::.l:代j歹 \ 它フj::.}:/      個人的には一刀斎先生については延々語りたいところなのですけど、
         }:l::.|:.ゝ""     '"/:/:;,′    それをすると、このスレが「やる夫で学ぶ伊藤一刀斎」と化すので、まあ自重。
          /人:ドヽ、_ .ワ; _彡l::]リ     
        ′ `ヽli^ヽT  | //i' |:/       あと、一刀斎は「剣聖」ってより「大剣豪」の方が合ってると思うので砂。
           __,.'´丶ヽ / /ヽ、′      第一、「剣の聖者(つるぎのせいじゃ)」なんてドスが効いてないじゃないですか。
         /ヽ..   ヽV /  . .ヽ    ●  
.        /ヽ.     / /  .l  .ヽ_  |   「大剣豪…。そう、俺を呼ぶなら、大剣豪・伊藤一刀斎とでも呼んでくれ!」
       /     !二二二二二 !'ヽ / l^l^|ヽ 
        /|    |‐―――――|ミ)| (l_l l_l_l) |  てなとこで砂。
        |.    丶―――――| ミヘ    ̄/   (ちなみにこのAAには特に意味は無し)
       |l     ヽ ――――‐|  ミゝ    ノ
―‐―――ヽ     `ー―――‐| \  ヾ   /―――――――
-_-_-_-_-_-_-_)    /  ̄、ヽ      \ 丶/_-_-_-_-_-_-_-_-_-
-_-_-_-_-_-_-_-人 <__ rj_j_|ノ ̄ ̄ ̄ ̄\ヽ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-

521 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:46:27.24 ID:HvBKXpE0
   / ̄ ̄ ̄\    /: /;;:::::::::::::::::::::::::::::::;;;ヽ
   l 一  あ l   /: /;;;::::::::::::::::  :::::::::::::;;;ヽ
   l 刀  ん l   l:: l;;;::::::::::::      ミミヾミヽ、
   l 斎  た l   ,l::l';;:::::::::  ...:::...:::...ミミヾ彡ゝ彡
   l. か  が l  ,l::l':::::::::  ..::::::_,,..-‐'"" ̄/ ̄ヽ、
   l.       l  l::l::::::::  ..::::::::/::::::::::::::::::::::l,;;;;::::::::
   \_  __/   l::l::::::::... :::::::://:::::::    .:::l;;;;:::::::::
.      V ,、,_,、;、,;_l::l::::::::::::::::::::l::l::::      l;;::::::::::
      _,'"'      l:.l:::::::::::::::::;;;l::l       'l:::::::::::
     _,ゝ       'l::l::::::::::::::::;;;;l::l::::::::::::::::::::::::::ヽ::...:::
     冫        l::l;:::::::::::::::::::l::l:::::::::::::::::::;;;;;;;;;;ヽ::::
    ,ゝ    ミ"/ハノ,;l::l:::::::::::::::::::ヾヽ::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;
    ゝ,,,_    ミ /'/ハ/ヾヽ:::::::::::::::;;;ヾヽ::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;/:
     ,;/ 'i ,;'"",,,_  'ヽ ヾヽ:::::::::::::;;;;;\\;;;;;;;;;;;;;/;;;::::
     l∂''"  ,,_''ヽ、, ..::::ヾヽ:::::::::::::::;;;;;ヽー―";;;::::::::::
      lヽノ   ヽO ヽ"..::::::ヾヽ:::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::
     i' :i      ̄~"" ,,_i"'ヾヽ、::::::::::::::;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::
    ,i' :ヽ       _::  l::::::/\\:::::::::::::;;;;;::::::::::::::::::
ー' ̄V  :. \    、__:::::"/  \ヽ,:::::::::::::::::::::::::::::::
ヽ ヽヽ\ ..:::.. \    ー::/_    ヽ、:::::::::::::::l"ヽr-、::
 ヽ\ヽ \ ::.. ::...\__//'"::::::ヽ-、..,,_ "'ヽ:::::::\~ヽ,ヽ
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:::..."'ー-l l-‐'"'ヽl l-―ー-'''"::::::/::::/::::::::::::::rへ、,,_ ヽ
  "'ー-l l-‐'"''ヽl l"''ー--::::::''"::::::;;/;;:::::::::::::くr 、.  7 "
     ヽヽ.._-_.//、ー-::::::::::::::::::/:::::::::/::::::::::>"  .::
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        神子上典膳吉明
       (若き日の小野忠明)

 さて、小野忠明の話に戻ります。
忠明は元の名を神子上典膳吉明といい、
関東の豪族、里見氏の家臣である神子上(御子神)家の出身でした。
若き日の典膳は親元を離れて寺小姓などを経た後、上総国の土岐氏に仕えたとも、
そのまま里見氏に仕えたとも言われています。

 そして、ある日の事、かの剣豪・一刀斎が近隣に来ているという話を聞き、
典膳は早速一刀斎のいる宿に押しかけ、立ち合いを挑みました。

523 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:47:31.40 ID:HvBKXpE0
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 しかし、一方的に敗北。
次の日、もう一度試合してもらい、それも敗北、と言われています。
この際、真剣の典膳に対し、一刀斎はその辺の薪で相手をした、という逸話もあります。
(これは諸説あるのですけど、とりあえず勝負して負けた、とだけ憶えてもらえれば)

 こうして、一刀斎の強さに感服した典膳は弟子入りを願い、一刀斎もこれを承諾、
その後、1年ほど一刀斎が旅に出て、戻ってきた後、
「今よりも強くなりたくば、我と共に諸国を廻るべし」と誘われた事で、
典膳は一刀斎に付き従い、廻国修行の旅に出ることになりました。

525 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:48:11.78 ID:HvBKXpE0
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             ,,,、、彡:::::::::;;:;:;彡;:;:::::::::;;;;;;;;;;;:;:;::i´o;;;;;o):;;;;ミ    お嬢さん~
    _,....,_,,、、.::‐'''''`"::::::::;;:::::::':::::;:;:;;;;;;;;〃;;;:_:;;;;:'''::::::::::`:ー::‐':::::::':;ミ     お~いらは善鬼。
 ,/´ _i⌒)゙==;、彡;:;::::::':::::::'::::::;:;:;:;;;;;;;;;:;:;/V`v、;;;_;;、rt┬r、;、;;ノミ;,      一刀斎の一番弟子よ~
/ ,/´  ̄   : :ヾ:、;;:;'::::::'::::;:;:;';;;;;;;;彡;;;;/ .,,,,__,,,,,,,_i/∨^^^^_∨ノ;;ミミ、
. /        : : :i i;;;:;:;:':::::::::::;:;:;;;;;〃;;;;i   ヾ(´O);:`t ''''T´iOノ i;;;;;:;: ,r 'フ´/フ"!三ミ:、
/       .o: : //;;;;;:;:;::::':::::::::;:;:;;;;;:;:;:ノ::..  `""´:::::ヽ l i,´ .:川: ! ,'  i:!  ゝ  ヽ、
: .       . : :_; ノノ;ヘ川;:;:::':::::'::::::;:;:;;;;;;;i、::::::::::;:r '  ::;::ノ   ',:;;ノ;:;:;:: 〉、ヽ ヾ! 、 ` - 、ヽ':,
二二二二´-‐''"!彡;;;i,从;:;:;::::::::'::::::::;:;;;;ii;::`::弋    ‘ー-、__,ノ.゙!;:;:;:;:: l )ソ l! ,! ミ 、へ ,r-'、
      o: : :,!,! 彡;;;';;i ',:;;;;';:;::':::::::::':;:;;;;;i. ヽ、:::.:.ヽ,_     _,,,, __,ノ;:;::::: ノ  ノリ ソミ 三 ニ:i、f⌒''、
   _._:_:,;ノノ 彡;;;;;;;;l !〃;;;:;::::::':::::::;:;;;;i    ヽ、 `ヾニ"亠ツo!;:;:;:: ‘1 u リミ ─ / //リ  ),!
二´ --‐t'i´   〃;;;';;i i  ',:;;;;:;::::::::':::::;;;;{、    i` ー--‐,.'" . !;;:;:;::::: '、  .:ヽ、 三彡ノ/' .;/
.  o: : :,!,!   .::l;;';;;;;:;!,!  リ;;;;;;:;:::::::::::;;;;i, `''- 、」,. -''"´o ,/!;:;:;:;:::::: ヽ _,;:: ソ リー;'"! i:. 〈
  . :_;.ノメ、  .:::::!;;;;;//    ',;;;;;;:;::::::::;;;;;;{_    o   ,. - '"  !;:;:;::;::;:;リ   _」,,,,,_  '、 `,) )
二´-‐ヾ/ヽ::::/z'/     ソ;;;;;;::::::::;;;;;i `ヽ、_,. -'"     リ;:;:;: ,.r:z;´、    ̄~~ヽ( r'
     ',‐-'i/_'' - 、,_     ',;;;;;;:;:;:;;;;;;;i            };:; /:.:.:.:.::'ィヘ        ソt、
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´`''<´ i、 `-、,,_       `ヽ ヽ ';;;;;;;;;;;;;;;i_,,.- ''''''''- .、,_`ヽ,/';;; }:.:.:.:.:.:.:.:.:.:'z 'x‐t‐rーィ、、_ ト{:.:!
                           善鬼

 さて、一刀斎には忠明より先に善鬼と呼ばれる弟子がいました。
彼も生まれ育ちは明確ではない(元船頭だったとも言われている)人物で、
以前、一刀斎に挑んで敗れ、それ以降、一刀斎に師事していたといわれています。
そして、長年一刀斎に師事していただけに、かなりの腕前(典膳より上とも)を持っていました。
(小野姓を名乗っていたとも言われてますが、真偽の程は不明)

526 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:50:13.62 ID:HvBKXpE0
 そして、一刀斎、善鬼、典膳の3人で諸国を廻り、
歳月が過ぎたある日(天正十六年(1588)とも文禄元年(1592)とも)のこと。

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 >;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ト-、_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ミ三  ,   ヽ\
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ゝ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;| /rヘヽヾ-='''シ    ≡ヾr=〈 ノ、
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;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:彡三.  ̄|三三 ヾ     / , イ   \     生き残った方に流派の正統を継がせ、
::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;{ /!  三|三三   ヽ  /    Lr‐-、 ノ       この瓶割刀を与える。
二≡=‐、_:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;`':::レ|  三|三≡     !          `ヽ'‐′
三 '''‐-,,_ \_::::::::;:;:;:;:;:;:;:;:|/|  !三三   l    (∠L..___  l
二     ヽ} ̄`ヽ、::::;:;:;:;:;レイ ヾ三二  l        `Y
三三.     l!三≡ミ、::::::;:;:;:;|  ヾ三二 ヾ    -‐'' /
三三≡     |!三≡  ミ、::::;:;:;:lノ!  ヽ三  / ̄TY´ ̄`'r=‐、_
三三彡'    l三    ヾ、::;:;:;:l_ノl_____,二フ′  ノ,へ 、_ ≡ ノフ'''‐、
三三彡     !三     l:::;:;:;:;:;:;:;::;/ /彡  〈(  `ヽヽ、 ヽヽ  l
三三彡    .|三ミ   ヽ .|:::;:;厂 `|≡ ,ノ    ヽ      l l  l }  `,
三彡彡   ,ノミ     l ,ト、::{ミ  {彡 {//         ヽヽ       }
三==、....,,,,ノヾヾヾ=-‐-、_/ .}::ヾヾミ.ヽ `‐、_,;;      ___ト、       ,′
三ヾ   ヾミ ヾ三シ   \ |:::::ヾヽ__\   ,....ノ ̄ ̄   `ーヘ  ./
三≡   lミ   三     ヽ;:;:;:;:\,‐ノノ`-、//==≡三三≡=ミ ヽ/

 一刀斎は、善鬼と典膳の二人に、流派の正統をかけての決闘を命じます。

 これが新陰流ならひきはだしないもあったのでしょうが、何せこちらは一刀流。
当然の如く、真剣での立ち合いとなります。

527 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:50:49.42 ID:HvBKXpE0
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;;;/ だ 忘 |:::;::'´ ,,.. ---- 、、,,,_|::. /    `ヽ、:::::::::::;:-─‐‐`´:::し'^l:;: j|;:. / ̄
;;;| .め れ |´ /;:;:;:;::::::::::::::::::::;:;:``ヽ、,,_ ..........:::}:;r'´:::        :::|;: ハ / そ 先.
;;;| .だ ち .|_/;:;:/;二二`ヽ、::::::;:;:;:;:;:;:;;三三ミ彡Y;:..           `'´i::::| |  う  輩
;;;| .よ  ゃ /;:;:;:/;/  , --、`ヽヽ:::::::;:;!::::   `ヾY`ヾ:三ミ三三==、、  ヽ| |  い が
;;;:;ヽ、___/..:r='^L..._{::{:i;!:}:} |::i;!:::::;:;!::::.    ::::';::::::  `ヾ;:;:;::::::::::;:`ヽ、 └l  う  上
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;:;:;|::::::..:..:.         .....:./!::::::;:;:;:;:;ヾ:.    ::::l::.   {- 、{:{:i;!:} |:!;;://;;;;;`ー─'
;:;:j::::::::..:..:.:..:..     .....:../  i:::::::::::;:;:;:;:;ヾ;::.....::::::::::!:::........:|_;:;:::: ̄ヽ、!j::<::ヽ;;;;;;ヾィ
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        ヽ   ;i' ,;i"/i";'/ハ/ハli'i'  彡 彡;-ー        ゞ,"ン、     /
や 祭 ず  l  'ヽi,/ ll ;;i' ;il 'i; ' 彡 彡彡           ミ< ゝ    / ほ.  ・
.っ .り  |    |    /ヽ"' 'i,  ヽ ' 彡 彡            彡>">  /  ん  ・
て で  っ   |.   'l';;;iii;;;;;;;;;,,,,、   ""ヾ、ミ、          ,ミ ,,ゝ  l  と  ・
た も  と   > /"::..,;,,,,,,_ ..::::.      "';; "ヾ,,,.-、      ミ >  l  に  こ
気        | /    ,,..゚.>.::..      彡  /,,ヽ.:l      ゝ,,ゝ ∠  楽  の
分       //"''       ::::::.     ミ  /= )'ハ:'l    <彡/'    l  し  .旅
だ    / ("   ..      :::      彡:/ヽ ) ノ,l   ,,ゞ "ゝ    l  か  は
ぜ /'"    "'ー-;:'      .::      ;;;/)丿 ...::/    _,,> i"     l   っ 
    ̄\.     く             .:;/_,r‐l'"    ミ /"/ ̄ヽ ヽ, た 
あ 不  |      r' ̄"ヽ        ...::/;l:: .::::l "ヾ;'i ミ"i'  / 何 l  \___
る 満  |      "i''          ..:::/;;l:: ..:::l   ''"ヾ''iヽ <  だ l
わ な  |      /          ..:::/;;;l:: .:::::l:.    ..::'l   ヽ か l
け ん  |      i,_   _,,... -―'''" ̄:::;;;;;l::  .:::l::.   ..:::::'l,,..,_  ヽ__/
ね て  |       "'''""rー'i, 'i,      l  ..::::l:::.  ..:::::::::'i,;=:,"''ヽ
え   /

 師の唐突な話を聞いて二人がどう思ったかはわかりませんが、
ともかく二人は承諾し、こうして決闘が始まります。

 世に言う「小金原の決闘」です。

528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2008/11/08(土) 18:52:35.03 ID:HvBKXpE0
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コtヽ、ヾ:::::::|    ,,,iii|||||||/ ̄|||||||||||||《
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--ヽ---ヽ:::::::::::\:::::ii| ",('i"'、::"ソ"-|彡:
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 ̄ ̄ ̄"  |::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ      ,,,‐‐‐/ ̄|''',,,..‐,,ii ,,,, ̄ヾY|    _,,__
 ヾ、‐、 ヽ|:::;;;;;;;;;;,,::::::::;;;;;;;;/||ヽ、――"''((,;;=・、ソ;:‐i;;;;・‐-十(⌒);;::彡;;;,,‐‐''""/;;;;;;;
ヽ、ヾ、 ""''ヽ..、/⌒\、:|;;;;;"\|‐---‐‐/"ii;-;,ソ''""" "'-,ii|⌒""''=,,,);;;;;;/"";;;;;
 "';、"ヾ、_   "''‐、  \;/ ヾ、""'''''"(/‐ヾ"''‐‐''"""|''‐⌒ヾ、―ヾ;;;:::‐‐";;;;;;:::―
\,,;ヽ、ヾ"'''ヽ、"  ヽ、ヾ;;|(|";;ヽ|.|;;;;;;;;;;;;;;(|-_____;;;;;;;;;;;;;;;''",,,i,i,,ヾ、)"i;;;::;;|;;ヾ、  ̄
  \;;、"i、  "'‐、 ヽ、;;;|(|;;::::::";;;;:::::::::::ヾi|||"|'|"|"|"|"|"|"|||;;;;;;;;丿:::/丿;ソ""'''ヾ
||:::::::::::ヽ、ヽ、ヾ、 ヽ ヽ;/ヾi(|::::ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||''"''''"""""''"‐''||||;;;;;;|ii;ii|;;;;;;;;;;;;::i ::::::
ヾ\:::::::::::ヽi、  ヽ ヽ ヽ::::::(|:::::::::;;;;;;;;;;;;;ソ|;;;;;;;;;ii:''''''';;;''''''''::;;;;;;;;||/:::|;;;;|;;;;;;;:::::ヾ、
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::\、    "''''-し(|"i'"|"::i|" /;;;/ ̄|//;;;,ヘ、;;;-‐''"\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iiii|::::::,,,-‐-、::::
           :しi;;;|;;;i|,,,,,// \i::i|;;;;/\ ヽ"    \;;;;;;;;;;;;;;;   

 そして、死闘の末、この戦いを制したのは典膳でした。
善鬼は死に、典膳が生き残ります。

 ちなみに、この決闘については、その発端や戦いの様子、その後の展開など、
全てにおいて謎が多く、それら諸説を書いていくとキリがないので、
とりあえず、「典善が勝って、善鬼が死んだ」とだけ憶えてもらえれば。
(「実は勝ったのは善鬼なのだ」説とかもあるので全パターンなんぞ書いてられねーのでアリマス)

529 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:54:41.77 ID:HvBKXpE0
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    ::::::::::|ヾ、 ::::::::{::::    ::::::::_,,,ノ...::::  i!:::::::::   \   見事なり!
    :::::::::::::::::゙'、‐ ':::::、`ヽ、_,、-'':::::::::     ;;i!   /;;;;;)   
   :::::::::::::ヽ、::::ヽ、:::::r'ヾ、 :::::::::::   __,,,,/∨ゝヽ  /;;;;/    貴様にこれを授ける!
:::::::::::::::::::::::::::ヾ、:::::ヾ、~''"¨"'''"¨""~`'''''''''":::::::::  /;;;;;;;;;>   
        ::::ヽ、:::::`i''""::::::    :::::::::::::::   /;;;;;;;;;;;\
           ::::::::`i、   :::::::::::::     ,,-'";:;:;:;:;:;:;:;:;∠
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             r――――――――――――――――――――――――――――-、
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   ̄ル        |_..ノ ノ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐´    /
             └――――――――――――――――――――――――――――''´
                            瓶割刀

                -それは 剣というには あまりにも大き過ぎた
                  大きく ぶ厚く 重く そして 大雑把すぎた
                  それは 正に 鉄塊だった-

 こうして典膳は一刀流の正統に与えられる「瓶割刀」を授かり、
ここに一刀流の正統二世となります。
(ちなみに、典膳に一刀流の正統を継がせた後の一刀斎の行方は不明。
 出家したとも言われていますが)

530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:56:27.87 ID:yQEDaG2o
そりゃ何でも割るわww

532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 18:58:08.85 ID:FKmUMM6o
戸部新十郎の一刀斎は面白かった。
お約束テンコ盛りで。

531 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:57:42.43 ID:HvBKXpE0
 さて、一刀流正統二世を引き継いだ典膳が江戸の駿河台(本郷とも)に居を構えます。
この時点で既に剣名は相当名高かったそうなので、
おそらく一刀流の指南もしていたのではないかと思われます。

 そして、文禄二年(1593)のある日。

∠ニ二 ̄ `ー-- 、_
    ノ    __ニニ_\_
     〉//ゞ、三彡ノ) _>
    / /乂-‐ -!(/   ( )   神子上典膳殿、おられますか?
  ノ∠ _.ヾミ ゾ - ノノ    (ヾ    私は徳川家よりの使者、小幡景憲と言います。
       , へフ i´へ    ( ノ
      / /\. ノ/\   | |
     ~~>   >O< <~   | |
      /   // ヘ  i   (て)
      /   |/  |  ヽ/ヽ<|
    小幡勘兵衛尉景憲

 典膳のところに徳川家よりの使者・小幡景憲がやってきます。

 ちなみに、この小幡景憲、甲州流兵学者として名高く、
『甲陽軍鑑』の作成に携わったと言われており、
また、後に忠明から一刀流の皆伝を受けています。

533 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 18:59:59.08 ID:HvBKXpE0
                ___
            ,、-''":::::::::::::::::::::::``ヽ、
           //:::::; -────‐-、::::``ヽ、
           //:::::/:::::::::::::::::::::::::::/:/|:::ヽ::::::\
        /::/:::::/::::::::::::::::::::;、-''´:::::/::::|::::::ヽ:\::ヽ       神子上殿、あなたに頼みたいことは、
       |!ト从::://:::::::ト、:::;、-'":::::::::::/::::/::ト、:::::ヽ:::ヽ::ヽ     
       |l|::ヾ、ヽ、:::::|ヽミ、:` ー─' ´:::::;ィ'!::::|::ヽ::::::ヽ::::ヽ::',     「膝折村で篭もっている罪人を斬ってほしい」
       ',ヽ:::::::` ー‐ヘ::\:::::::::::::::::::/ ヽ:::ヽ:::\::::\:::!:::!
        ヽ::::`::ー一'´::::`ヽ二-‐ '′    \:::\::`ー‐イ:|::!      ということなのです。
       ト、::::::::::::::::::,、=イ  ヾ--====、 ヽ、::::二彡!::|::|    この罪人は剣術に優れている上、死に物狂いで
       V|::|:`T、,.-;-<´     ィT:::ヾ、  |:::|::l::|::::::|::|::|    手が付けられないため、村長が、
        |:|::||:::! ヒ'::::j         {':::::ノ /  |:::|::|::|::::::|::|::!    剣名名高いあなたに是非、と言ってきたのです。
        |:|:::|:::| ヾ= '′|     `ー‐'′ /://::/::::::|::l::|     どうか、行って下さいませんか?
       |::ヾミノ! ' ' ' 〈 .、    ' ' ' ト‐'´:::::/::::::/://     
         ヽ:::::::/    r----‐、    {::\::/:::::::://::/      「…いいぜ、行ってやるよ。案内しな」
        \彡\   VT"´ ̄ }   >、::ヽ、::::/:/         
          `ヽ::ノヽ、 ヽニニノ  / ドミ三r‐'´
   _____,、--‐''"::::::`ヽ、___, '´   /__:::::::`ヽ、___,、--‐
  `ヽ、::::::::::::::::::::::::::,.<\ヽ::::|     //::::::\::::::::::::::::::;、-‐''"´
       ̄ ̄ ̄ ̄   \::ヾ:、|    /:/::::::::::::::/  ̄ ̄ ̄

 江戸近隣、膝折村というところで剣術者の罪人が民家に篭もっており、死に物狂いで手のつけようがない。
村長が検断所へ訴え出て曰く、

 「これはどうしても神子上典膳様でなければあの悪者を斬ることは出來ますまい。
  どうぞ典膳樣に仰せつけられたいものでございます」

 ということだったので、家康が景憲に通達と検視を命じて典膳のところへ向かわせたと言われています。

534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 19:00:09.01 ID:ZdBHlgs0
徳川勢バケモノ過ぎだろ…やらない矩だってフリーザ様より強いんだし…

535 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:00:51.87 ID:HvBKXpE0
            ∧ン             て,
.,ヘ        `ーイ                ´7_
 , ヘ        ト=″                 ソ
ノ , ヘ      >                   〃
._,ノ  ,ヘ、    ミ、     ,、             ,イ      おい、そこのお前。
  _,ノ  ,ヘ 、へ_ゝ     F ヾク ,イ        i{ |     この典膳が来てやったが…
\ _,ノ   ヽヽ > 「ヽ   _」  }( リ | ,イト、( ) ヾ />|
  >     /Y  |ヾ\ i|   ヾ`  i! |  !{`リノY´_ |     家の中と外、どっちで死にたい?
/ ヽ__ノ   、ヘ く ヾ   〃ヽ______,   ≦ォタ |      
  //  | / /  ヽ _)    、、_, ̄゛〃く  ̄``l
//  / _1 /    `ー、      ̄´   __」    /   _  
/  /   |  ト、    ヽ           ヽ,/  ̄ フ/  ̄ ̄ ̄ ヽ
   /|   |   ヽ     ` 、     _ ` _´/  , へ ̄ヽ⌒ヽ´ ̄ ̄
  / |   i    \     \   ´  ̄ ├ー'   ヾ ヽ  `ヽー
 /  └  ヾ     ー―― -ヽヽ 、____〈______ヽ ヽ ヽ
>、     \_        __ _,ノ ̄  }     `ヽ ヽ


          ,x-f-廾‐f-<  
         Y  ゝ二二∠ Y  
       ィ-|  豆》==《戸 |-、     そと、そとがいい
        ∨ /イn....nヽヽ ∨      
        |   ,―――、  .|       いえのなか、よくない
        人  | シ~ ~ゞ |  ノ\ 
      /::::ヽノ ノ⌒ヽ .ゝイ::::::::ヽ
     /:::::::::::::::`ー――‐'":::::::::::::::ヽ
     /--v::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::v--ヽ

 典膳はその罪人の篭もっている家の戸口まで来ると、己が来た事を告げ、
「出てきて外で立ち合うか、家の中にこちらから立ち入られるか、どちらがいい」と問うたところ、
罪人は、かの典膳と立ち合えるなら仕合せである、として、大太刀を抜いて出てきたといいます。

537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2008/11/08(土) 19:03:27.73 ID:HvBKXpE0

   , ', '" .,.'"/、   /:.:.:.:.:.:彡 " /  彡",   ' "二三 - ‐ '"l:.:.:.:.:......         ,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´
  ./ ,'   /i l:.:.\.l:.:.:.:.:.:.:.:.', ' " ,  '   - ー三三 二彡!:.:.:.:.:..      ,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´      ' ´ ' ´' ´
.i .,', |\ l:.:.! i  `' ,'":.:.:.:.:.:ヾ' " - ー 二三二三三 彡,':.:.:..   ,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´      ' ´ ' ´' ´
.|/ i !:.:.:ヾ! `' :.:.:.:.:.    :.:.:.:.ノ, 三  ̄ 二 三≡-,三三 /:.:..,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´       ' ´ ' ´' ´
:.:./ヾ, " '" ,ノ   _, ‐-,='"   :.:.` 、彡彡/ ,'  ̄' ノ彡,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´ ' ´      ' ´ ' ´' ´
:.:.l (_;;ーニニニニニ,,__-' _,:... .   :.:.:.:.:彡''" ( ,ノ,   ' ´ ' ´ ' ´  ' ´       ' ´ ' ´' ´
、:.:`‐゙'ヾ、`ヾ、,,,__`-' /             ,   ' ´ ' ´ ' ´ ' ´        ' ´ ' ´' ´
.!::   :.:.:.`彡    ̄       ,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´       ' ´ ' ´' ´
iー    /:.:.:.:...      ,  ' ´' ´ ' ´ ' ´        ' ´ ' ´' ´
             ,  ' ´ ' ´ ' ´ ' ´        ' ´ ' ´' ´
         ,  ' ´ ' ´' ´  '         ' ´ ' ´' ´
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,  ' ´ ' ´' ´          ' ´ ' ´' ´
' ´ ' ´          ' ´ ' ´' ´

 そして、罪人が太刀を振りかぶって出てきた途端、典膳の刀が唸り…

538 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:04:16.44 ID:HvBKXpE0

                 __:;;;li:,:;:.;l';:!::;::';;li;:l;,':;l;;!,:i;;;li:,:;:.;l';:!::::::;::;:.;l';:!
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           r'"~: : :: :: : : :: ;: :: ;;!;"`;ー-―-、;i;i;:;:;;;li:,:;:.;l';:!::;::.;l';;:;::::
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|=二_ ./"-、_;:; ,,r'"、;:;:;: l;: ;:;: ;: ;:;:;`i: ;:; ;: ;;: ;:; ;;;;';:;;: ;:; :; ;;; ;: ;:; ;`l
r-、_ /~~`-.>'"-、_`、`;: l;: ;:;: ;: ;:_,,,l=_-;: ;;;: ;:; :; ;;: /,,r''"- ;:: : ;/
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`ー"|,、;_;__|,,;:;;: ;:: ;:; ;:/  .l"二=、`、: ;:; ;: ;;:',r'"l~___ ;:; ヽ、;;: ;;;;ノ
   '!ニ=|ー`ニ=;:;r/ ,,r';:;::;: ;`、` ,;:;;;;r''",r'"~;: ;`;:;:;;;、、l./
    `-、|二二";:;::| ,l"_‐;:;:::; ;:;:;`lr'" r'";; ;rーヽ;:;: ;:.:|:|/
      r~ ̄`、;:::,|.,|ー‐、;`、;::;::,r'"  /';: ;::;;:'|,:::゛|;;:;;:_ノ
   .  |ー:、;;;;;r',r'/,,;;;:; ::;`-;:/   '|:;::: :;; ;|,r'"~ ̄
      `ー-‐'",./"; :; `、;;: ;/     `ー--'"
          (`ー-、_;;ノ;/
          `ー--‐"
   ー―|―- ヽヽ / ̄ ̄/
     .│     / ̄ ̄/  / / /
   /  │ ヽ      /    /


 次の瞬間、罪人の両手首は太刀ごと地に落ちた。

539 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:06:13.46 ID:HvBKXpE0
          ヾlヽ l、i .Y l / / / / 彡
         ミ   ヾi l           彡
         ミ    ヽ  lヽl'"彡  彡
         ヾ、   ハ l'i;l l,i 彡    彡
罪人        i'   l 'i; 'ヽ'" 彡''""''彡
 ↓        /l ハl"i,'  "        "彡
'"          l l lヽ 'i  ,,;;;;'""      彡    「おい、こいつの首は刎ねていいのか?」
       U  ヽヽl"',,;;;;;'"              
 u           "'i"..::::,,r‐''"/
   ,.-‐-、   U  ,l:::::::...ヾ/            「かまいません」
...:::/o   i::::::..........:::../-   ::::...
::::/i"'-―'"ノ ...:::::://
 /,:''"''""'' ....::/. く_,,,,;;;;"
.i',i'    |  ..::::ヽ/_ヽ_l ノ  _
.U   U ..::::/二ノ;;ノヽ,l "''",.r‐"      /
:..     ..::_//:::::::::::"l ,i:. u "‐r::..    /:::::
::...... ..::'i'‐r'";ii;;iiiiiii;;;;//:l  u  l    /:::r‐-
:::::::::..::: 'i 'i;;iiii;;;iiiii;;;;ゞ=/   ..:::..ヽ、__/_,r'"
::::::::::u::::i', l;iiii;;;;iiii;;;//'/  ...::::u/::::::::...\r‐'''""
:::::::::::::::::'i/;iii;;;;iiii;;/ l,/..::..:::::::::/i..::,.-―'"ー--
::l,:::::::__ヽii二iiiニノ:::::::::::::::::/;i/"::::....

 そして、典膳は景憲に罪人の首を刎ねるかどうか問い、承諾を得た直後、首を刎ねたといいます。
この典膳の腕前に、見ていたものは皆舌を巻いたと言われています。

540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2008/11/08(土) 19:08:16.82 ID:HvBKXpE0
                      \  
                       \  
                         \           /|
                       ,,-'―\       _,/ノ   . .
        ___,,-―――='' ̄ ̄    _,,-'―=''' ̄_,/|  o    *
_,,-―=''' ̄      ___,,-―――='' ̄ __,-―='' ̄   / .   . .  ……というわけなのです!殿様!
   _,,-―=''' ̄        _,,,-‐‐彡彡)ミヽ       /  +    神子上殿の腕前は凄いのですよ!
 ̄ ̄       ヾ, ミ ミ ヾミ 三 三 彡/彡ノ  \ヽ    /  . . .  .
      ,,-='|彡彡ヾミ 三ヾミ 三 三 彡/    ヾヽ  /   。. ★  ☆
    ,,,-''| | | |彡'"   ノ              ノ   ヾl/     。.    .「ホホホ…景憲、あなたの言う通りなら、
-―;'l l | | | | | |   (;;;)    |___,/  (;;;)   ||l   . ☆  +    その神子上という者、大したものですね。
  | | | | | | | | |:::::::::::::....      |     /    ..:::::::......|||l + .   . .    よろしい!二百石で召抱える旨、伝えなさい!」
.  | | | | | | | | |、\__/|     |     /      |ヽノノ|l    . .   ☆
  ヽヽヽヽヽ/~⌒ヽ彡/       |   /        \ミノノ ☆ . *  +.  .
―‐\ミミ/ _ -─ 、\       |  /        /⌒ヽ、.  .  . .
 / ̄ ̄__/    l  |       |_/         / /ヽ  ̄\+★
  ̄ ̄\         \            / / / ̄ ̄ *  ☆

 そして、江戸に戻った景憲は、このことを逐一家康に話すと、家康は感心し、
典膳を二百石(三百石とも)で旗本に召抱えたという…。

 これが、典膳の徳川家へ仕官した際の逸話です。

542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 19:12:22.17 ID:FJf003Yo
200石とはまた太っ腹

541 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:09:01.85 ID:HvBKXpE0
         ∨三三三三三三三三三三ニ/      ここで少し補足するけど、実際のところ、
    __  lニ>‐ '´ ̄ ̄ ̄` ー<三三/      典膳の徳川家仕官は諸説色々あってよくわからないんだ。
   〈三三二ニ―‐- 、 ___     `ヽ|       主な説としては、これまでの話の流れの他に、
   ∨三三三三三三三三三三三三二二ニ¬  
     ヽ三三二ニニニニニ二二三三三三三/  1: 元々一刀斎に仕官の話がきていたが、
     Y´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:\::.:`ヽ::<三/     一刀斎がこれを断り、代わりに弟子を推挙した。
      ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::、::.::.ヽ、::.`、:l:T      (つまり、小金原の決闘は仕官の推挙も兼ねたものだった、という話)
    |::.::.::.フ7¬‐、ヾ、:\>、:|-ヘ::.::.}::!:|       
     {::.::/代了圷ミヽ. \行‐t予l:ノ/::|      2: 一刀流の正統を継いだ後、家康に招かれ参上し、
      !::.::.::.:| ゞ-'′  \  辷シ '/:/::./        目の前で一刀流を披露したが、仕官が叶わなかった。
     |::.::.::.:ゝ       ,       厶ノ::.;′       しかしその後、病に臥していた時に盗賊退治を命じられ、
     ヽ.::.::l|ヽ、    r-、     /::.::/         病の体をおして、ふらふらのまま勝ってしまったところ、
        \:ト、:j> 、   _,.ィ:´::;:l:: /          「この男も病になったら弱るのか。
          ヽ ` ,.イ `¨´ ト、レ'|/ |:/           以前、見た時は強過ぎて人間かどうかすら不安になったものだが、
          __,. '´_>v< `ヽ、′           ちゃんと病気になれば弱るとわかって安心した」と
     ┌イ  //了,ハ\\ヽ `┬ァ         家康から声が掛かり、仕官できた。
     /7 |  { く/ノ/引ヽヽノノ  | }-、        
     /:.:.:.:{ |  `ー'´//l弓| |`ー′  | } :.:l      なんてものがあるね。
   /:.:.:.:.:.{ |     // ]弓ト、ヽ     |「 :.:.|     まあ、剣の腕が立ったので仕官できた、というのは共通してるね。

543 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:16:04.79 ID:HvBKXpE0
      __
   __「ー--  '\        あと、余談だけど、もうひとつ、
   |\ヽ_____/ヽ      
    >、ー──‐ ' }     「典膳が将軍家剣術指南役・柳生但馬守の屋敷に乗り込み、
  /ィ ` ー──.'.´「      真剣の宗矩に対し、その辺にあった燃えさしの薪で立ち合い、
   リ,   : : : : : : 从      遂には傷一つないまま宗矩を薪で打ちまくって煤だらけにした。
      ,ゝイ ̄ ̄`ハ      そのあまりの強さに驚嘆した宗矩は、
   /!  |{〉   〈|       大久保彦左衛門を通じて典膳を将軍家指南役に推挙した」
  〈{   L'====┤     
   /:`''ー┬──.イ       というのがあるんだけど…。
  ∧!  /: : : : : : l      講談話なのは当然としても(だって典膳の方が先に仕官してるし)、
  /::::{  ヽ; : : : : : l      色んな意味で微妙な説なので、割と扱いに困るよね、これ。
  ゝ‐'\    ̄ ̄ ノ.     (小野派一刀流宗家著の「一刀流極意」にも載ってるらしいのですが、
      ̄ ̄ ̄         どういう扱いで載せてるのか不安になりま砂)

544 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:16:42.08 ID:HvBKXpE0
                       ,;vi,;;  ,;r
                  VW'"'/'"/ yY/ '""Z-,;_       
                _ゝヾ  ゝ  ヾヾi-,ゝ-;ゝ彡  フ__
                _,ヽ> /ハハ/'"'ヾl ヽl"lヽ、ヾミ /z_      
    _,,.           >  ,,,,,,,,,,,   ,,,;;;''''''""""'ヽ、"'ミ Z     
 _,.-''" ヾヽ       ∠ミ;;'""r-、    r'''"o"''ヽ、  <ミヾ"'ゝ     俺は…小野次郎右衛門だ!
 l_,..-'''"~'i::l'\      Z,; r'"'l::::::\  ""''ー--''  ..:::ヾミ ミ Z
 'i.    l::l::::l      ゞl   l_ヽヽ ゝ        ..::::::ミ ミ ゝ   
  'i_ _,,.-'"'ヽl      <l     "''ー-、       ...::::::::ミ ミ ゞZ
   i",.-'""'';,l,       l,  /..::::::::::::....."'ヽ、 ノ..::  ..::::::::ミr‐-、t'     
   ヽ、r''"~.:::i,       l::..::....::     ::::.........::::::....:::::::::::::/〆) )"
   /('i,,r''"..::iミニ"'''ゝ  'i::..            :::::::::::::::/ヽ__,,/       
   iハヽ'i, ,,...::'l"'ヾヾゝ  l::::... ...:::::::::::::....  ....:::::::::::::::::/ i::l"'
    "~ヾi,.f'" :::'lミミr''ヾゝ ヽ::::...::::::::::::::::::::::....:::::::::::::::// l:::l       
    "'ゞ i r-''::l,ヾゞ )::'i  'i,ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::: .::/ ::l
       'i,;'   ::::l;,ミゝ    ヽ "'ヽ、:::::::::::::::::::/::::::  ::/ ..:::l_,.r‐''""'''--;;,,
        i,..;;;'"".:l;,    ,;;,,, ヽ "':::::::::::::::::::::::::::::  :::/::.. ::::l;;''"",,,;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ,..-‐;,,

 また、これを機に典膳は母方の小野姓を名乗り、
名を「小野次郎右衛門」に改めたといいます。
(実際には、後の上田七本槍のところでは、
 神子上典膳の名で書かれているなど、改名の時期は不明瞭)

545 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:22:50.74 ID:HvBKXpE0
 そして、仕官して8年経った慶安五年(1600)、東西両軍の決戦のため、
軍を率いて西へ向かう秀忠に従い、典膳も従軍します。
そこで起きたのが、前回紹介した上田城での戦です。

      /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\
    /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、;;;,、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|__レ'´レ ┐__;;;; ノ!;
    /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト‐'从;;ノV;;ノL;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;ヽ;;ヽ‐r‐‐ ヘ;;
   ./;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ'ヾ;;j;;;;ノi;;ハ、;; /;`l;;;;;ヽ:..ヽ;::ヽ;;l;;;;l;;;;;;;;|;;
   /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r'ゞ;;;ト;;ハ、;;从;;j;ヾ|;;;7;;;;;;ヾ O!;O|0|0;|;0,,;j;;
,/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; くヾ;;;ミ;;;ノ;;ヾ∧;;シ;Ll;;{;;;;;;;;;;|;∧∧j;;/;;;;ノ、、ヽ、;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ミ;;;;ミ`>ヾ;;;;ヾ∧;ミ゙!レi;;;;;;;;;;;;|l==レ`イV| | |゙!ドミヽ;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;; ミ レi;!l、リ;!l;レ_,.イ |;;;;;;;;;;;∧ノ   //://,、==ヽヾ;i
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ::`≡==& lt;ト`''´, /;;;;;;;;;ハ ト、..:∠彡::,ィく_,.ヶヽ.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ:::::,、 :、_ 〉,ィ/;;;;;;;;;;;h ゙̄フ  ̄`Y:/::::::l!.ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ヾ '三"/;;;;;;;;;;;;;L!イ|    ヾLl):::|L;ヽ.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、====、 _;;;;;;`'''"´;;;;;;;;;;;;;;;;|=、 `フ    ヽ::ヽヽ:/ ヽ.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r彳;;;;;;;;;;  O;;/;;;;;;;;;;;____,.へ==レ'=<      ヽ::ヽ/ // _}、
\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;∧;;;;;;;;;;; __/;'´ト、`丶、。   \lD ィ='c=、-、    ヽl,ハ<O ,.>‐、,、_/
  \;;;;;;;;;r‐|;;;〈‐┬‐''";,  O;;;レヘー‐ 、\ '"|K´ス   `゙´0)   /`{⌒`´  、ヽ,/ 三  
   `''"ノニトイ;;;||ヽ;;;;;;;;;,, ノ;;;;;;Yヽr'´`ヾcィレ''ミ;ヽ          ヽl⌒l `ヽ./ 三,、-‐
    /:|::o|:::゙l;;;;||  ,. -‐'";;, O;;;j;;;;;|,.ヘ ゙l=<;;;;}__Lミヽ         ゙、,r゙、=;/  /_,、-''"
     ヽ!`''^i::::ヽ;X;;;ヽ;;;;;;;;;;;;;;;; / O;|;;;;;;゙l ̄ ̄     ``''- 、       _ヽ<|// ,/    
     |つ:::ヽ、_:::::\ヽ:. ,.ィ';;;;;;;;;;/::O;;;L..._   /       `゙7ーァ-;r'´/ ∧/〃_,,、-''"´
     ヽー‐‐''´::::,.くoヽ∧,ヽ  /;;;;;;,,,, | ー 、 ㎜        {  { {   / ヽ__ノL)   
   __    `ヾ==<‐、o!;|;;,,,,,,,ヽ∧;;;;;;;;;;;/ー- 、__ー、ヽ r‐、_,,、ゝ-`-ヽ | /  ヽ--<   
 r< ,ユ___,r‐'´ |::l:::`{o''|: |ー;;;;;;;;;;;;゙! /!;;;;`ー--  ,ヽヽ| レ'゙}      /     |;! .|   ;;
 |;ィ/__ 彡V! /|:::|:::::::'´゙l: l;;;;;;;;、-';|'´   ゙、;;;`ニ ミ゙ `ヽ==、ミ、     /     |;| | / ;;;
 !〉;|;;;|::rヘ;;;;レ;/|::::゙l::::::... ゙l. l;;;//;j    `l;;;;;_ハ、,.,.ノ|゙丁ヽ`゙`≡ミヾヾ_    |;;;| .!彡 ;
. |〉|‐‐ヾソヽ:`ドl::::::゙i;:::::::::.゙l..ヽ/;;/      ヾ_ニニ/| ハ_ノ  |ヽ ヾ;;::;:;:Y.   |;;;;|  | '"/
. |;⊥;;;;;;r'ヽ::ヽ;゙l゙l、:::::ヽ::::::::::ヾ:`ク       ヽ;;;/:::::  .´::::::....::/||;ヽ/!;;;::;;;;゙i   |;;;;;;|  |  
. |;;;|;;;;;;;;;| ヾ、::ヽヽヽ、__ヽ、___ノ/           Y::::::::  / :::::/ ∧;;/ ノ;;;:::;;;::゙i .|;;;;;;;;|_|  
 !;;|;;;;;;;ノ    ̄ヽ;;`ー、;V==イ/         |、___ ::::r-'゙;;/ ..;/ ヾ.;|;;;;;:;;:::|j;;;;;;;;;;| |_,,、--、
 ヾ;;/      `` ー‐'"´          ヽ;;;;;;;;;ヽr';;;/;;;;;;/`ヾ;;;;;:i;;;;;;;;;;|;;;;;;___|     /
                           ヽ;; ̄ヾ|;;;;;;;;;;;/   i;;::ミ二;;r''"__  /7 /
                             ゙ヽ、;;;\;r'//ヾi;;;从;;L;;;、''";;;;/ // /

 ここで次郎右衛門は、辻久正・朝倉宣政・戸田光正・中山照守・鎮目惟明・斎藤信吉の6名と共に、
上田城にて活躍し、「上田七本槍」と称され、讃えられることとなります。
(脇槍で太田吉正も入るという)

546 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:23:49.82 ID:HvBKXpE0
.  / ′    /  /   ,{ ト≠イ      い
  ,」 /     /  ,i   //,j }   } }   l  i }
/ V     i,′,イ」 /// } ,′ /ム  |  lく
  {!     { {frkl/メく ノ' ィナ云__}i }  ト、ヽ
  以     ' !{ ̄{く   / ' `ー气7 /  ,′ヽヽ     小野次郎右衛門…。
    } ! !   トト|       {     /イ //     vハ     君には、我が領内の吾妻にて謹慎してもらおうか。
    リ ハ  }      }     / イ'       い
   ( ( 从小、  ー──‐   .イi {      } }
  / 小{ 'く  \ ` ̄ ̄´ /从rく      / ,′
`く    {!  ヽ、__ ヽ、  / /  } } \   / /
丶丶   vハ  /  7'⌒¨´{Tヽ. //    '  / / ̄
  ヽ ヽ.  Vハ/   /    }}  V/     V /
           真田信幸

     /  . .:::::::::::: : . . . : :./   7.::::::::::::::.. .  !     
     /  .::::::::::::::::::::: : ::::::/ヾ__ / : :::::::::::::::: :.  |
     |: ..::::::::::::::::::::::::::::::::/ヽ __/::.  :::::::::::::::::::.. ゝ
     ,' :::::::::::::::::::::::::::::::::/ヾ、_./::::::.. .::/⌒十'⌒´ 
   / .::::::::::::::::::::::::::::::::/` 、 /: :::::.r一' ヽ〃)。      …しょうがねえ。
   / .::::::::::::::::::::::::::::::::::/` 、 /::: :::/ `ヾ_r〈 ゜ 
ー/.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ヽ__/:::::: ::i :.    _」    
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/` 、 /: ::ト、 !     |   
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::┴一 1: ::::::::`ー 、r―'   
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.⌒ヽ.    
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: : . . .\     
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  ̄ `¬   

 が、実際のところは、抜け駆けの軍紀違反であった上、
真田方の依田兵部に対し、どちらが先に初太刀を浴びせたかで辻久正と言い合いをするなど、
問題行動が目立ったことで咎められ、真田信幸の預かりとなり、
真田領内の上田国吾妻に蟄居させられます。

547 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:24:36.53 ID:HvBKXpE0
  \  、\ ,.=-‐-、___// _∠.r.ムイ
ヽー‐デ >_ r-、ヽ.  \ ̄ ̄ _,.  _/
 `7´ ,イ /´,ィkム、ヽ.Yニ、、ヽ-‐'´-=ニ、,___,.ィ   
  //// /    \ ヤ‐_ヾ、ト-.、   ,.  /    次郎右衛門は良い武者だ。
 /′//i  i / ,.ヘ,ヾy'ri`!ニ二._`く‐''"´     そろそろ許してやっても良いのではないか?
    {'  〈ヾi、!k∠「  ,r’ノャ=、- 、,_\
   _,.、-ヘ.`Z_ン`   ト5′ヽ ` _,.>'^ー
      ̄`入´ ‐   ,イ i    〉)'´  ⌒
    ∠´.ィ/\ _,/丿 |_,rイ/-ー''⌒`ヽ
        結城秀康

 その後、罪を許され、下総国埴生郡の本領二百に加増、及び旧地改めがあり、
最終的に上総国山辺・武射の両群に六百石の知行地を領する事となります。

 なお、放免された件については、
結城秀康の周旋があったとも言われていますが、詳細は不明です。

548 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:26:36.77 ID:HvBKXpE0
              |ヽ
             ,ヘノ:::::ヽ
           /:::::::::::::::::ヽ
        /| /::::::::::::::::::::::::::ゝ
       /::::|/:::::::::::::::::::::::::::::::::::〉/!
       |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://|
       |::::::::::::::;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
      |\:::::::::/  `、::::::::/ ヽ:::::::::::::::|/ 
      ヽ:::::::::/    !::::/   !:::::::::::/     次郎右衛門…その腕前、見事だ!
      \::::::::>    V __<,,=-、/    お前には褒美に我が名を一文字やろう!
         ヽ「`|〒=。,_;' 。=〒|#l)     今日より「忠明」と名乗るが良い!
        ‐ゝ、!  ̄",└≡=ナ-┘  
         `∧  i=`==、 ∧´    
―┬─┬―i⌒/  \ー='/ ヽ⌒i―┬─┬─┬―
  !   !  |  | |.  ハ`ー'´ハ  | |  |  !   !   !
            徳川秀忠

 また、この頃、秀忠に一刀流の極意を言上し、
その褒美として、勝光の脇差、御料の羽織、黄金に加え、
秀忠の名から一字を拝領し、名を「忠明」と改めたといいます。

 これが、「小野次郎衛門忠明」という剣士の物語です。

550 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:30:11.13 ID:HvBKXpE0
     ゝ-‐―──────-、―- 、 /     さて、これで「小野次郎右衛門忠明」という剣士が
. _, -' ̄               ̄`―Y、     どういう人物であるか、概ね伝わったと思うけど、ここで重要な点は
(                        ヽ、   
.ヽ    , -‐―" ̄ ̄ ̄`―--、__      )    「彼が戦国時代の考え方の武士(or武芸者)であり、
  ` y‐"´     、         ``‐、  /      また、それまでその生き方で報われてきた(成功した)」
  //,  i   ノ, lヽヽ、    、   l  、 l,,/     
  i'//l  | /λヽヽ、ヽ _,-‐ヽ''"!  i |       という点にあるんだ。
  l| l 'i ‐-/イノ‐ト ヽ、ヽヽ ._,=-t'フ   | |      実際、軍紀違反で蟄居を命じられたにも関わらず、
  l,| | |l ノニ-y--、ヽ `ヽ /'i,,,;;;,l/ ノ  l l      蟄居が解けた後で加増(それも蟄居前の3倍に)を受ける、というのは
   ',l lヽ、ヽ` i..:::l  ヽ    ̄ // , //      つまり、それだけ戦場での働きが際立っていて、
   ヽl', `ヽ_ト ̄   、     ノl /,-/ヽ      また、周囲からも、問題は多いけど、実力は確かである、と
    ノ l li lヽ、   -   ,,,,,/-‐''''""''―-、   認められていた、ということだからね。
    /  ,ヽ',   ` ‐,- -‐''"~~~            (まあ、「上田城七本槍」は敗戦の失態を覆い隠すために
,,,,,-―''"'')`iヽ}、-‐'"ヽ、  _, -‐'"~ ̄'/ヽ      作り出された虚構とも言われてるけど)
     ) )/'´ ,--、 >' lヽヽ、    ) ノ       
>'´ ̄"''"(~/ _  ̄`Y l | > ヽ   (`/       そうでもなければ、主君から名前を一字拝領することなんて
     ) l     ̄`y'  | `´/  iノ       なかっただろうし。

552 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:34:31.03 ID:HvBKXpE0
 さて、話は戻る。
斯様な逸話を持ち、既に剣名名高い小野次郎右衛門忠明が既にいるにも関わらず、
今回、家康は宗矩に秀忠付きの剣術指南役を命じたのである。

             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /  
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ      小野忠明ですか…あの者の腕は確かに立ちます。
         \_      ゛゛Y"""     __ノ     実際、剣を取って立ち合えば、
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l       あなたより強いかもしれませんね。
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ        
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´       
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)     
. |  u   (__人__)      ……。
  |     ` ⌒´ノ    
.  |         }     (つまり…剣の腕とは別の話ということか…?)
.  ヽ        }     
   ヽ     ノ    
   /    く        

553 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:35:05.80 ID:HvBKXpE0
   \      ,..''  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  __,,,,/    /  |
  |   \        ` .、::::::::::::::::::::::::::.,-‐'"'"     /    .|
   i    `'''ヽ、       -:::::::::::::::::::      -‐'"'" /    /    
   `i    |  `、'''ヽ、、     .ヽ.Y    , ..-':''" ゙/   /   ../    ホホホ…宗矩、わかりますか?
    `、  |    `、  (:、、   . .|  ,..-')   /   /  ‐-‐'      私がなんのために秀忠にあなたを付けようとするか…。
     ‐-‐'| \  `、....,,,`_゙ヽ_、_,| ノ、."..-'''''''" // .. /         
       |  \\γ .,--‐-‐ "゛"゛‐-‐'''"゙'' |///  /         さあ、答えてみなさい。
       `i| \\ |        、      |///  /\`i      
       /`i  \ |   < ___ ゙''-''"'_,,,, >.. |///. /   `、     
     /   `i\\|     ヽ゛⌒⌒/゛   |/ / /           
          `i \|     `.、__ ノ     //.-
           ~\      ‐'''''‐   / '
               \      /
                 "'''゙''-''"~

   / ̄ ̄\ 
 /    \ /\
 |    ( ●)(●)     
. |  u   (__人__)      ははっ、それでは…。
  |     ` ⌒´ノ      
.  |         }     (ここで間違った事は言えない…!
.  ヽ        }      間違えば…全てが終わる!
   ヽ     ノ       俺も、柳生も…!)
   /    く       

554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2008/11/08(土) 19:38:18.15 ID:HvBKXpE0
         / ̄ ̄\   
       /    \ /\
       |    ( ●)(●)     …お話を伺いました限りでは、小野殿の剣は戦場の剣。
       |     (__人__)     殿が仰られる「大将の剣」ではござりませぬ。
         |     ` ⌒´ノ     
         |         }       徳川家の跡継ぎ…即ち「大将」であらせられる秀忠様に、
         ヽ        }       万一の際に危機を脱し、生き延びる「護身のための剣」、
    /  ⌒ヽ    '´(       即ち、我が新陰流の「無刀取り」をご指南する…これがひとつ。
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.


             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /  
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ        ………。
         \_      ゛゛Y"""     __ノ      
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l      
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ        
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´       
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i

555 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:42:48.10 ID:HvBKXpE0
         / ̄ ̄\        そしてもうひとつは、心得としての剣術…「心法」をお教えする事でござる。
       /    \ /\     我が父、石舟斎が言う、
       |    ( ●)(●)    
       |     (__人__)     『世を保ち 国のまもりと なる人の 心に兵法 遣わぬはなし』
         |     ` ⌒´ノ     (意訳:国を治める人こそ、心法として剣術を用いるべき)
         |         }       
         ヽ        }        この兵法歌の通り、秀忠様には、単に剣を振るう術ではなく、
    /  ⌒ヽ    '´(       人の上に立つ者として、剣を振るう際の心得こそお学び頂く必要があり、
   / ,_ \ \/\ \     それを説く為に、それがしを秀忠様へ付けることにされた…。
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.    そのようなお心と推察致しました。


             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /  
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ        ………。
         \_      ゛゛Y"""     __ノ      
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l      
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ        
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´       
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i

556 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:47:52.21 ID:HvBKXpE0
    /i||||||||||||||||||iヽ       
 / ̄ヽ||||||||||||||||||||||||iヽ          …その通り!
'""ヽ  ヽ!|||||||||||| ||||||! ヘ 、― /    見事ですよ宗矩!
||l   ___ヽll,‐''''__ゞi .||||||     
||l  /ヽ、 o>┴<o /ヽ\||||||     「護身のための剣」と「剣を振るう者の心得」。
ヽ‐イ  |ミソ ̄'"ノ"/li゙ ̄゛l;|l |、      その2つこそが秀忠に必要な「大将の剣」なのです!
.\/l  .|ミミl l―――フ..l;ll /       
 .\ノ  |ミミ.l..\=ヲ/ l;|/         戦場で振るう剣など、所詮、雑兵の技…。
   ̄\ |ミミ.l..  ̄ ̄,,,l;/         そのような「匹夫の剣」に大将たる秀忠が熟達しても意味がありません。
   l \ヾ゙゙....  ̄."/i          
 _/_``\ ̄、 ̄/ /l___      宗矩、このことを常に心得ておくのですよ。


   / ̄ ̄\ 
 /    \ /\
 |    ( ●)(●)      ははっ!
. |      (__人__)       しかと心に刻み付け致します!
  |     ` ⌒´ノ      
.  |         }      (…疋田様だけではなく、小野殿すら「匹夫の剣」扱いか…)
.  ヽ        }       
   ヽ     ノ      
   /    く        

557 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:48:25.12 ID:HvBKXpE0
             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /        よろしい!
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ       では後ほど、秀忠にも引き合わせます。
         \_      ゛゛Y"""     __ノ      
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l        宗矩、秀忠を頼みますよ!
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ        
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´       
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i


            /⌒`"⌒ヽ、             
           /,, / ̄ ̄ ̄\              
          /,//::       \       ははぁッ!!
         ;/⌒'":::..        |⌒ヽ     
       /  /、:::::...       |ヽ_ \   
     __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒  )   
    ━━━`ー──ゝィソノ-ヾy_ノー─━━

558 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:49:45.04 ID:HvBKXpE0
           /´...:...:..:..:..:.::::::::::::::::::::::::::`丶、    
       ┌―-'- ...,,,__..:..:..:.:.:.:::::::::::::::::::::::::〉     さて、この話をまとめると、ここで問題になったのは、
      |...:...:...:..:..:..:.:.::::::::: ̄ ̄`:::::‐-、__:::::/     何故小野忠明ほどの剣豪を既につけているにも関わらず、
 (´    L ―――--...,,,_:::::::::::::::::::::::::`ヽ、_    改めて宗矩を秀忠の指南役につけたのか、という点なんだ。
  ヽ、__,ィ´::::::/:::/:::l:::::::|:::、:::::ヽ ̄¬、__::::::::::::/   
       |:::l:::/::::l::::::|l::|::::l|::`、:::::::、:::::::l:::::「ヽ_/      もし、宗矩の方が剣の技量が上なのであれば、
      l::l:::l:::::|-r‐ト| !::::K-‐、::―ヽ:::|::::::ノ::|      単に入れ替えればいいだけだし、忠明の方が上ならば、
        リ:::|::::l::!l::::| ! ヾ、!ヽ,.::ヽ_;;::_`ー/‐':!      わざわざ宗矩をつける必要もないよね?
        !::|::::|::YTヽ  ヽ r'i´  リ:::|/゙}/ソ        
       l:ハ:::!从 ト_j      ゝー;'!::/:!ノ '       そうなると考えられるのは、剣の腕の強弱云々ではなく、
         ! ヘ:{ヽト、""_..'_  ""ノ:::ノハ:{         一刀流とは異なる剣を教えるため、ということなんだよね。
         ヽ `/´__`ヽィ´/ ' `         実際、家康自身、石舟斎の新陰流(柳生新陰流)を学ぶために、
         、_,/ .../;;;;;;;;;ヽ..ヽ`ー- 、_         既に奥山休賀斎の元で新陰流の免許を得ているにも関わらず、
        ,_/アュ、ヽ;;;;;;;;;;| r-、   j!`ト、       石舟斎に誓紙を入れているわけだし。
        ノ`ー'、フ ...` ̄´f、ヽ_>、 ノ!r':::::ヽ        
       /:|  。ヘ`ー-ri´r'´  ∨ン::::::::::::\     即ち、宗矩の剣-柳生新陰流-は秀忠に学ばせるに足る…、と
   __,,.イ´:::!   。│/!} {!:| f、。   ゙、::::::::::::::::::::\   家康は判断した、と考えられるわけだね。

559 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:50:26.96 ID:HvBKXpE0
 そしてしばらくして、宗矩は、秀忠と引き合わせられた。

             ,-,ii|||||||||||||||||ii、‐、
  ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_/ i|||||||||||||||||||||||||i ヽ_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
   ゛゛llll||||||||||/ ' i||||||  |||||||||||||||||i ` ヾ|||||||||||llll"""
       ゛lll/   |||||||  ||||||||||||||||||    ,llll"""    さて、秀忠。
         \   l|||||||||||||||||||||||||||l   /       前にも話をした通り、この宗矩を、
         彡   ゛ll||||||||||||||||||ll"   ミ        そなたの新たな剣術指南とします。
         \_      ゛゛Y"""     __ノ     
           | ]下ミ─-。、_|_, 。-―テ「 [ l         この者の剣こそ、そなたが学ぶべき「大将の剣」。
           ゝ_,. lミミi=´<_,.`=i=ヲ 、__ノ         この者を師とし、よく学ぶのですよ。
                 ヽlミ| 「‐、=ラ7 |ヲ'´           
_______  , へ ノ`i=、_ 二 _,=iゝ、_,へ、  _ ______
i    i    i  ̄| |――-\ ̄∠-――| | ̄ i    i    i


              |ヽ
             ,ヘノ:::::ヽ
           /:::::::::::::::::ヽ
        /| /::::::::::::::::::::::::::ゝ
       /::::|/:::::::::::::::::::::::::::::::::::〉/!
       |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://|
       |::::::::::::::;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
      |\:::::::::/  `、::::::::/ ヽ:::::::::::::::|/      ははっ、承知致しました。
      ヽ:::::::::/    !::::/   !:::::::::::/     
      \::::::::>    V __<,,=-、/      宗矩、お前にこの誓紙を入れよう。
         ヽ「`|〒=。,_;' 。=〒|#l)       これからよろしく頼むぞ。
        ‐ゝ、!  ̄",└≡=ナ-┘       
         `∧  i=`==、 ∧´    
―┬─┬―i⌒/  \ー='/ ヽ⌒i―┬─┬─┬―
  !   !  |  | |.  ハ`ー'´ハ  | |  |  !   !   !

560 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:51:12.63 ID:HvBKXpE0
         / ̄ ̄\   
       /    \ /\
       |    ( ●)(●)      ははっ、確かに。
       |     (__人__)      
         |     ` ⌒´ノ     以後、「大将の剣」たる我が「柳生新陰流」を
         |         }       秀忠様にご教授致します。
         ヽ        }      
    /  ⌒ヽ    '´(      (この宗矩が…今や天下一の家の剣術指南役か!
   / ,_ \ \/\ \      …感慨深い!)
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;.

 
          | /    \ j冫`ヽ        /
             | |   ヽ / | 卜  |      /
           ||  /\ ヾー'  | /     /      (フン、大将の剣…か。ご大層な。
            |  |/´     ∨/     ´' -,,,_    今、俺の指南をしている忠明の一刀流と、
          |  ||\     _ム,,,,,,,,、__──'''''´     お前の柳生新陰流とやらがどう違うのか、
           |、_| / ,,         ヽ、          じっくり見せてもらおうか…)
           ) ` ´       〉     ヽ
           /,,  /| ,    /:    !  ヽ、
            `~'''‐'、   /;;     !   \

562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 19:53:25.89 ID:ZdBHlgs0
相変わらず秀忠からは小物感が漂ってるなあ…

564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 20:02:43.96 ID:8/2mzjwo
この2人はどうしても影武者徳川家康のイメージがww

561 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 19:53:09.10 ID:HvBKXpE0
   \      ,..''  ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  __,,,,/    /  |
  |   \        ` .、::::::::::::::::::::::::::.,-‐'"'"     /    .|
   i    `'''ヽ、       -:::::::::::::::::::      -‐'"'" /    /    
   `i    |  `、'''ヽ、、     .ヽ.Y    , ..-':''" ゙/   /   ../    
    `、  |    `、  (:、、   . .|  ,..-')   /   /  ‐-‐'     ホホホ…宗矩、いいきっかけです。
     ‐-‐'| \  `、....,,,`_゙ヽ_、_,| ノ、."..-'''''''" // .. /       そなたには、更に千石を加増しましょう。
       |  \\γ .,--‐-‐ "゛"゛‐-‐'''"゙'' |///  /       
       `i| \\ |        、      |///  /\`i       また、江戸に屋敷を与えます。
       /`i  \ |   < ___ ゙''-''"'_,,,, >.. |///. /   `、     三千石の身となれば、それなりの屋敷は要りますからね。
     /   `i\\|     ヽ゛⌒⌒/゛   |/ / /          道場としても使える、立派な屋敷がね。
          `i \|     `.、__ ノ     //.-            ホホホ…。
           ~\      ‐'''''‐   / '
               \      /
                 "'''゙''-''"~

            /⌒`"⌒ヽ、             
           /,, / ̄ ̄ ̄\              
          /,//::       \          あ、ありがたき仕合せ!
         ;/⌒'":::..        |⌒ヽ      この宗矩、更なる忠勤に励みまする!
       /  /、:::::...       |ヽ_ \   
     __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、 /⌒`ー'⌒  )   
    ━━━`ー──ゝィソノ-ヾy_ノー─━━

 こうして、慶長六年(1601)、宗矩31歳の時、
宗矩は秀忠より誓紙を受け、その剣術指南役となり、更に千石、加増された。
元からの柳生庄二千石とあわせれば三千石である。

563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2008/11/08(土) 19:59:11.04 ID:HvBKXpE0
   /::::::.:.:.:.:.              |             さて、今回見落としてはいけない点は、
 ./:::::::::::::::::.:.:., .-────‐-、|            この時、与えられた「千石」のことなんだ。
 〈:::::::::::.:.:,r'"´  _   -─‐─‐-L_          
  ヽ::::.:/ , -'"´              \         「柳生宗矩は政治家として評価されたのであり、
   Vr'´.:::::::::::::.:.:.,   - ─‐──‐‐- 、/          剣士としての評価は然程でもなかった」
 /.::::::::.:.:.:.:., ィ:7::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.、:::.:.<         
  \.::::::::::,ィ.:.:/:/::ヽ:::::、:::::::::::::::.、:.:.:.ヽ:.:.\        というのがよくある宗矩評なんだけど、
   \,::イ::|::/:/.::::::ト、:::ヽト、::::::::::i::l:::::|:::.:.i::|       そうなると、引っかかってくるのが、政治家でもなんでもない時期、
      i.::i:::|/ー-、/ \::.\`> -‐'':|:::.:.|::|       単なる剣術指南役になった際に与えられたこの「千石」という評価は何なのか、
     |:::|:::!/:::::''ー==z、 ヾ:、´,、-=ュ!::!::::::l/  r‐ 、     ということなんだよね。
     l:、!::ト、::〈ヾ_トッツ    〈じソ7l/:::/:/  !   |     
      !::ヽ:::`:、. , , ,    ′ , , , , /.:/:/  /   !      当時の宗矩は、あくまでも家康の近習に過ぎず、
     ヽ.::ヽ:::.\    r ┐    /:,:::イ  /   /     また、関ヶ原の報酬としても、既に柳生家に対して二千石の柳生庄が
        \ト、:::::: .、  ー′ , イ:::/l仁ニ7   /⌒ヽ   与えられている以上、この千石こそ、この時点の宗矩の剣に対する評価だった…、
         \Nト> ー‐<'´ ̄17.:.:.:ノ   ,イ!  ノ⌒! そう捉えることができるんじゃないか、と思うんだ。
          _ノイ厂   (´ ̄ `ー'   イソ  /  /ヽ   
          /イ夊刄   `ゝ─-、    > -‐< _ノ /    そしてここでキモになるのは、
       ,イ7!ノネ;l/;/  /ソ.:.:.:.:〈/ 「ヽ ̄`ニ   >、/ヽ   家康が「強弱だけが剣ではない」と考えていたということ、
         /ノj 〉;/,};;;/  /j}.:.:::::::::::i  \`Tにコソ´`Y^7  つまり、家康にとっては「剣の優劣」は
      /.ノj./;/j} |;;|  ,/ソ'.:.:.:::::::::::|    \。〉仁ここソ   「剣術の腕前」とイコールではない、ということなんだよ。
      /::ノj l;/ j} !」 /j}.:.:::::::::::::::::| ___, イニニ7'´ ̄    (実際、そうでもなければ、「匹夫の剣」の逸話や、
      ,イ:〈/   _j}  , イソ'.:.::::::::::::::::::j /.:.:::::::.:.:.|       今回の「大将の剣」の話なんかはありえない訳ですし)

565 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 20:05:19.71 ID:HvBKXpE0
     |      ,.  ' "´ ̄             /      ところで、当時、剣術に限らず、武芸というものは、
   _ ⊥. '"´                 /      戦場での実戦術であると同時に、「芸」でもあったんだ。
  〈           ,.   - ────く      ある意味、能や茶の湯と同じく、「趣味」の扱いだったわけだね。
   ',:::::.:.   ,  '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::;i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ    
   ',::::::,  ".:i.:.:.:.:.:.:.:i .:.:.:.:.:.:.:./:|i::::::::::::::l::i:.:.:.',     それ故に、この時代の「剣術指南役」というものは、
    V:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.l.::::::::;::::/ハ:l:::::::::::.:|::|::.:.:.!    正式な役職ではなく、その芸に秀でていた者(家臣以外も含む)が、
    !:.:.:.:.:.:.:.|::::i::::::::|.:::::/.://  i:l::::::::::: |::!:::::::!    プライベートの立場で主君に芸を教授する、というものだったんだよ。
    !::::::::::::::|:i::l::::::::|:フナナ'ー l:トヽく::::l::l:::ハ:|    (なお、「芸で仕えた者」の最たる例のひとつが千利休)
    ヽ:::::::::::|:l::l::::::::レzr==ミ リ rzトV/l/     
     ヽ:::::::::|:|::ト、:::::l ヽトーイソ    ヒ1:::| ′       だから、「剣術」の「指南」に対して与えられる報酬は、
      ヽ:::::|:|::l:::',::::',   ̄     ,' !:::|        決して高いものではなかった(まず千石を越える事は無い)し、
       \ト、:ト、:';::::',.      _ _ /::::|        またそれが、当時の武士たちの間における剣術の評価でもあったんだ。
         ヽヽ::ト:;::::L_     ,..イ::::::::/        実際、戦場では殆ど剣は使われなかったわけだしね。
          ,r一ヽヽ::::|  ``7´ヽ:/1::/        
        ノ     \:::|ー‐介ヽ  l/           そういう点から見ると、家康が宗矩に与えたこの「千石」は、
    _∠二ニヽ、.   ':;|  /:ハト、\           剣術の指南の報酬としては破格のものであり、
    厂 , '⌒ヽX、_   /:/i i::ト、 \         即ち、家康自身の「剣とは強弱だけで評するものではない」という価値観と、
    / /.:.::::::::.:.ヽX_}、 l:/ i i:! l   fヘ        そこから見て、宗矩が剣士として家康に極めて高く評価された証である、
    ヽ/.:.:::::::::::::::.:.ヽX_} l:l  i i」 l   fヘ}        そう見ることができるんじゃないかな。

566 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 20:06:23.96 ID:HvBKXpE0
                    (二二二ニ/二二ニ/二|二二ヽ二ヽ二ニニ)
                    //_/__//_/__//_/| |ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
                   //_/__//_/__//_/_| |__ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
                   //_/__//_/__//_/__| |_ヽ_ヽヽ__ヽヽ_ヽヽ
   二二二ニ/二二ニ/二二二//_/__//_/__//_/_| |__ヽ_ヽヽ__ヽヽ_ヽヽヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ二二ヽ
   //_/__//_/__//_/__///_/_//_/__//_/_ | |___ヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
  //_/__//_/__//_/__//○====○====○======.○=====○===○===○===○ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
  //_/__//_/__//_/__//_|   |┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬|__|_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ_ヽヽ
 ○====○====○====○===.|   |││││││││││││││││||  .||===○===○===○===○===○
                  |   |││││││││││││││││||  .||
                  |   |┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴|| 柳 ||
                  |   |┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬┬|| 生 ||
  ___________|   |││││││││││││││││||   ||____________
  \/\/\/\/\/\|   |││││││││││││││││||   ||\/\/\/\/\/\/
  /\/\/\/\/\/|   |││││││││││││││││| ̄ ̄|/\/\/\/\/\/\
  """ ̄ ̄ ̄'''''''''''''''""""" ̄""" ̄ ̄''''''''''""""""""""""""""""""""""""" ̄ ̄'''''''''"""" ̄ ̄ ̄ ̄"""""""""


 そして、宗矩は江戸の竜閑堀・道三河岸に道場を兼ねた屋敷を下賜された。
以後、宗矩の行動の拠点は江戸になる。

 後の「江戸柳生」が、ここに誕生したのである。

567 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 20:08:09.77 ID:HvBKXpE0
  \ヽ, ,、
   `''|/ノ
    .|           \ヽ, ,、  
_   |            `''|/ノ  
\`ヽ、|             .|   
 \, V"         _   |   
   `L,,_         \`ヽ、|   
    |ヽ、) ,、        \, V"  
   /  ヽYノ           `L,,_  
  / r''ヽ、.|            |ヽ、)    ,、   
  | `ー-ヽ|ヮ          /     ヽYノ    
  |    `|          /    r''ヽ、.| 
  |.     |         |     `ー-ヽ|ヮ 
  ヽ、   |         |        `|   
   / ̄ ̄\         |.        |   
 /  _ノ ヽ_ \       ヽ、      |  
 |  (≡)(≡) l         ヽ____ノ     
. |   (__人__) .|        /_ノ ' ヽ_\    
  |   ` ⌒´  |       /(≡)   (≡)\  
.  |        }      /::::::⌒(__人__)⌒::::: \   
.  ヽ       }     |      |r┬-|     |  
   ヽ     ノ       \      `ー'´     /  
  
┼ヽ  -|r‐、. レ |
d⌒) ./| _ノ  __ノ 

【やる夫で学ぶ柳生一族(その7):「宗矩、柳生家を継ぐの巻」】 完

570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 20:10:33.76 ID:FJf003Yo

評価の推考がなかなか興味を惹かれたよ

571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 20:11:30.44 ID:ZdBHlgs0
お疲れさまでした。
江戸柳生誕生でみんなの夢がひろがりんぐ!ですね。

572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/08(土) 20:13:00.61 ID:UCc7MR.o
乙です。

>>563
宗矩の剣士としての実力ってのは、息子の十兵衛が月之抄で、
祖父に勝ると言う言葉を初めとして、賞賛する言葉を残してるぐらいだし。

身内びいきするタイプの人間じゃなかったろうし、万一それを差し引いた
としても、宗矩は一剣士としても相当に高い実力を持っていた証言になるかと。

584 :1 [saga]:2008/11/12(水) 14:46:11.18 ID:EzKS80k0
>>572
 あれで述べている”祖父は師に優り、父は祖父に優り云々”ってのは、
一剣士としての剣腕のことを指してるかどうか不明なので、その辺微妙でアリマス。
どっちかっつーと”新陰流は代を重ねてますます発展した”程度の修辞と捉えるのがよさげかも。
まあ、宗矩の一剣士としての腕前がどうであったかについては、これも書いていければなあと。

573 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 20:17:55.57 ID:HvBKXpE0
 てなとこで、今回は終了でアリマス。
毎度ありがとうございます>ALL

 やー、やっぱ夕方だと軽いです喃。
パー速で休日の夜は鬼門で砂。

 当方が巻き込まれたVIPのアク禁は10/14からだったので、
1ヶ月で解除されるなら、来週はVIPでやれるはずなのですけど、さてはて。

 あと、宗矩の剣士としての評価についての話なのですが、
その辺は、今後の話の中で語ることになると思われます。
よろしゅうです。

 それではではー。

579 :【やる夫で学ぶ柳生一族(その7・続)】 [saga]:2008/11/08(土) 21:10:34.06 ID:HvBKXpE0
 あと、今回の追加キャラのリストも挙げておきます。
また話が進んで、ある程度キャラが増えたら、
リストごと更新しますか喃。

【その7・新規登場キャラ】

【柳生関係者】
  金春七郎:北島マヤ(ガラスの仮面)
  金春八郎:速水真澄(ガラスの仮面)
 柳生庄住人:ムック(ひらけ!ポンキッキ)

【一刀流関係者】
 伊藤一刀斎:不死のゾッド(ベルセルク)
    善鬼:ワイアルド(ベルセルク)
  鐘巻自斎:パック(ベルセルク)
   唐十官:王大人(魁!男塾)
  小幡景憲:シールケ(ベルセルク)
 罪人の剣士:変身前の使徒(ベルセルク)

   瓶割刀:ドラゴン殺し(ベルセルク)

【徳川家】
  結城秀康:ブロリー(ドラゴンボール)

582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/09(日) 00:17:52.97 ID:wWEAvdgo
もう悪鬼羅刹で外道で腹黒じゃない秀忠を見て違和感を感じてしまう辺り毒されてんなあ俺

583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/11/11(火) 00:58:56.25 ID:CEHgl1Y0
>>1は柳生以外の剣豪の話はどのくらい出す予定?
剣豪物はここ以外読んだことないからできれば色々話をしてもらえると嬉しい。
あと幕末はやる可能性ある?

584 :1 [saga]:2008/11/12(水) 14:46:11.18 ID:EzKS80k0
>>583
 とりあえず柳生に絡む剣士/武芸者はある程度は出す予定。
ただ、使いたいAAが無かったりするのが悩みどころ。

 幕末はまだそれほど調べ切れてるわけじゃないので微妙。
もし書くとしたら人斬りとか新撰組じゃなくて、
その頃の江戸の四大道場その他メインになるかもなあと。


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